
- KFCのフライドチキンは、日本のクリスマスの習慣になっている。
- 1970年代はじめに日本KFCの立ち上げに携わった大河原毅氏は、カーネル・サンダースの人形にサンタクロースの格好をさせるという習慣を生み出すことに一役買った。
- 同氏は、クリスマスにフライドチキンを食べることは西洋の習慣とニュースで嘘をついたと述べた。今でも後悔しているそうだ。
- フライドチキンがいかにして日本のクリスマスの習慣になったのか、その全容は、Business Insiderのポッドキャスト「Household Name」で。
“クリスマスにフライドチキンを食べる”という日本の習慣は、嘘から始まった。
1970年、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の1号店がオープン。当時の店長、大河原毅氏は売り上げに苦戦していた。
道行く人には、赤と白の縞模様の屋根に英語の看板を掲げた店が一体何の店なのか分からなかった。お菓子屋なのか床屋なのか……。
大河原氏は当時の様子をBusiness Insiderのポッドキャスト「Household Name」で語った。お金があまりにもなかったため、時々、店の裏に保管していた小麦粉の袋の上で寝ていたと。
当時、日本ではクリスマスはメジャーなイベントではなかった。そもそもクリスチャンは日本の人口のわずか2%にも満たない。
ある時、店の近くのミッション系の幼稚園から、クリスマスにフライドチキンを買ってパーティーをしたいので、サンタ役を務めてくれないかと打診された。
同氏は快諾。サンタクロースに扮装して、フライドチキンのバーレルを抱えて教室内を踊り歩いたとHousehold Namesで語った。

パーティーは大盛況。すぐに別の幼稚園からもフライドチキンを楽しみながらのクリスマスパーティーを依頼された。
大河原氏はこのアイデアに乗った。店の前に立つカーネル・サンダースの人形にサンタクロースの格好をさせ、フライドチキンをアメリカの七面鳥のディナーの代わりとしてアピールした。
このKFCの取り組みはニュースになった。大河原氏はNHKに、フライドチキンは本当に西洋のクリスマスの習慣として一般的なのかとインタビューされた。
これが嘘をついた瞬間と大河原氏は語った。
「チキンではなく、七面鳥を食べていることは知っていました。しかし、『はい』と答えました。嘘をついたのです」
「今も後悔しています。しかし、多くの人が気に入っているようです」
ちなみに、KFCを世界的に展開しているKFCコーポレーションの親会社ヤム・ブランズ(Yum Brans)は、来日中の外国人がクリスマスに伝統的な七面鳥の代わりにチキンを売ることを提案したとしている。
正確な起源は何にせよ、KFCとクリスマスを結びつけるという大河原氏の決断は、同チェーンを倒産しかねない状況から大成功へと導いた。
さらに、日本の冬に新しい習慣を生み出した。
このクリスマスキャンペーンは、1974年に全国展開され、大河原氏は1984年に代表取締役社長に就任した。
クリスマスが近くなると、フライドチキンの売り上げは急増する。日本中のKFCの店舗はカーネル・サンダースの人形にサンタクロースの服を着せている。
チキンを販売している他のファストフードチェーンもキャンペーンを実施する。チキンを買う客が大勢いるためだ。
今、大河原氏がついた嘘のおかげで日本では、多くの人がチキンを買うために数時間も並んだり、数週間も前からキチンを予約している。
クリスマスにフライドチキンを食べるという伝統は、こうして受け継がれていく。
フライドチキンがいかに日本のクリスマスの伝統になったのか、その秘話の全容が気になる方は、Business Insiderのポッドキャスト「Household Name」から。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)