2017
3/9
ようやく寒さもひと段落して、暖かい日が多くなってきました。この時季の、古くから受け継がれてきた大切な行事と言えば「お彼岸」。もともとは仏教行事として伝わったものが、長い年月のうちにご先祖さまを敬う慣習へと変化、日本独特の文化として定着したと言われています。お彼岸は、春分の日を中日(ちゅうにち)として前後の3日を合わせた7日間の「春彼岸」、秋分の日を中日とした「秋彼岸」の年に2回で、お墓参りやお供え物をするのが一般的です。
■言葉遊びから生まれる呼び名
お彼岸のお供え物として、江戸時代からの定番となっているのが「ぼたもち(牡丹餅)」、「おはぎ(御萩)」と呼ばれる和菓子。どちらも蒸したもち米に餡をまぶしたものですが、なぜ呼び名が2つあるのでしょう?その理由は日本の季節と密接な関係がありました。
春に咲く大きな丸い牡丹(ぼたもち)と、秋に咲く小ぶりで細長い萩(おはぎ)。春秋のお彼岸の時季に咲く牡丹と萩の花を小豆餡に見立てて、それぞれをそう呼ぶようになったのだとか。
・・・と、ここまではご存知の方も多いかと思います。ですが、さらに夏と冬にも異なる呼び名があることは、あまり知られていないのでは?
おはぎを作る時は、お餅と違って杵で搗(つ)きません。そこで、
杵で搗(つ)かない
↓
『搗(つ)き』を知らない
↓
「搗き知らず」とし、『搗(つき)』を『月』とみなす言葉遊びから、
● 夏:「夜船」(夜は船がいつ着いたのか分からない→着き(搗)知らず)
● 冬:「北窓」(北向きの窓は月が見られない→月(搗)知らず)
と、それぞれ呼んでいたそうです。
同じ菓子の呼び名を四季で季節に合わせて変える細やかさは、遊び心や日本的な風情だけでなく、自然と生活の結びつきも感じさせてくれますね。
■相性抜群!おはぎとコーヒーで楽しむ春のお彼岸
そんな「おはぎ」にも新しい波が来ています。最近はモダンな現代風おはぎが次々誕生しているのだとか。ココナッツ・レモン・かぼちゃ・紫イモ、さらにはショコラなどの新感覚おはぎ。種類が豊富なのにサイズが小ぶりなので、あれこれちょっとずつ食べたい女性にも、甘さひかえめの現代風の餡で男性にも人気だそうです。昔ながらの素朴なおはぎでも、現代風のモダンなおはぎでも、添える飲み物は“和菓子にはお茶”という方も多いと思います。ですが、あんこの甘みと、コーヒーの爽やかな酸味、コクや苦みの相性は抜群です。その絶妙なマリアージュから、日本茶よりもコーヒーを選ぶ方も増えてきているそうです。おはぎをはじめ、自分好みの和菓子とコーヒーの組み合わせを探してみるのも楽しいですね。
伝統を受け継ぎつつ、斬新な和スイーツとして進化を続けていた「おはぎ」。今年の春は、彼岸入りが3月17日・お中日は3月20日(春分の日)・彼岸明けは3月23日です。ぼたもち(春なので「牡丹餅」ですね)にコーヒーを添えて、ご先祖さまへの感謝の気持ちとともに、いただいてみてはいかがでしょうか。
おはぎ、ぼたもち大好きです。ただ、「餡をまぶす」とは言わないと思いますが。ごまやきなこは「まぶす」で正しいですが、「餡で包む」のほうが適切だと思いますよ。
Posted at 2017.03.14 by Future