明らかに投機で「行動せざるを得ないときあった」と神田前財務官

アジア開発銀行（ＡＤＢ）の次期総裁で前財務官の神田真人氏は14日、為替相場がファンダメンタルズからかい離し急激に動いて家計や企業が対応できない場合、政府が是正に動く必要があるとの見解を示した。都内で開かれた内外情勢調査会の懇談会で講演した。

　　神田氏は、「為替レートはファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが好ましい」と述べた。ただ、そこからかい離して急激に動いてしまう場合があり、その多くは「投機のせい」だと指摘。先進国では介入はすべきではない、効果がないというのがオーソドックスな見方だが、日米金利差の縮小や投機の動きを踏まえると「行動せざるを得ないときがあった」と財務官当時を振り返った。

　　堅調な経済を背景に米国の利下げ観測が後退する一方、日本銀行は利上げ判断で経済・物価情勢を慎重に見極める姿勢が続いている。円安基調が続く中で市場では１ドル＝160円が意識され、介入への警戒感も強い。財務官在任中に為替介入を指揮した神田氏の発言は、通貨当局の動きを探る上でヒントになり得る。

　　歴史的な円安が進んだ2022年９月、神田氏は24年ぶりとなる円買い介入の陣頭指揮を執った。円安の流れに歯止めがかからない中、その後も同年10月、24年の４月から７月にかけて断続的に介入を実施。財務官在任中の介入規模は合計で約24兆5000億円に上り、「令和のミスター円」とも呼ばれた。

　　神田氏は介入後の円相場のトレンド反転はファンダメンタルズからかい離した動きだったという証拠だと指摘した。また、一連の為替動向は学会で注目されており、今後も研究に期待すると語った。

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