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    ファクトチェック廃止のザッカーバーグ氏、トランプ氏寄りに急旋回

    • メタ、独禁法や通信品位法巡り利害-ヘイトに関するポリシーも変更
    • アマゾン、エヌビディアも-大手テック企業が寄付などで好意示す

    メタ・プラットフォームズが第三者によるファクトチェックを廃止するという決定を説明するにあたり、トランプ米次期大統領お気に入りのニュース番組「フォックス・アンド・フレンズ」を選んだのは偶然ではない。

      インスタグラムやフェイスブックといったソーシャルメディアのプラットフォーム上で、数億人の米ユーザーに影響を与えるこの動きは、実のところ、たった1人の視聴者を対象としたものだ。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、長年にわたる対立と緊張を経て、同社をよりトランプ氏寄りの組織として再構築する試みを始めた。

      今回の廃止について、ザッカーバーグ氏は外部のファクトチェック担当者が「政治的に偏りすぎており、特に米国で信頼を築くというより破壊してきた」と述べた。取り組みの新たな責任者に任命されたジョエル・カプラン氏は、フォックス・アンド・フレンズに出演し、メタのプラットフォーム上でより幅広い言論の自由を確保すべきだとの主張を繰り返した。ブッシュ(子)元大統領のスタッフだったカプラン氏は、共和党とのつながりが強い。

      メタの措置は同社が支配するインターネット帝国に広範かつ大規模な影響を及ぼす可能性がある。トランプ氏が嫌う品質管理と事実確認システムを排除するもので、現時点では米国国内に限り適用されている。

    Key Speakers At The Meta Connect Event
    メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグCEO
    Photographer: David Paul Morris/Bloomberg

    大転換

      メタの動きは、かつての同社の姿勢にはまるで逆行するものだ。2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件を受け、同社はトランプ氏をフェイスブックから追放した。これに対しトランプ氏は昨年の大統領選期間中、フェイスブックを「人民の敵」呼ばわりし、ザッカーバーグ氏を投獄すると息巻いた。

      それ以来、ザッカーバーグ氏はトランプ氏本人や側近との関係構築を模索してきた。暗殺未遂にあった際のトランプ氏の対応を公に称賛し、同氏の就任基金に100万ドル(1億5800万円)を寄付しただけでなく、トランプ氏の主要な支援者である総合格闘技団体「UFC」のダナ・ホワイトCEOをメタの取締役に任命までした。選挙後、ザッカーバーグ氏はトランプ氏の私邸「マールアラーゴ」で同氏と会食している。

      メタの広報はこの記事に対するコメントを控えた。

    支持の輪

      トランプ氏を支持する姿勢を示した大手テック企業のトップは、ザッカーバーグ氏だけではない。選挙戦中にはトランプ氏支持の集会を主催し、選挙当日はトランプ氏のそばにいたテスラのイーロン・マスクCEOは、トランプ氏と主要企業CEOらとの会議に同席し、次期大統領就任前に何をすべきかといった議論を主導している。

    Musk And Ramaswamy Meet With Lawmakers On Capitol Hill
    米テスラのイーロン・マスクCEO
    Photographer: Al Drago/Bloomberg

      アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏は、傘下の米紙ワシントン・ポストに予定していた民主党大統領候補のハリス副大統領への支持を取り下げさせた。アマゾンもトランプ氏の就任基金に100万ドルを寄付しており、トランプ氏のメラニア夫人についてのドキュメンタリー映画に、ライセンス料として4000万ドルを支払うことで合意したとも報じられている。

      人工知能(AI)向け半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、トランプ氏の規制緩和の取り組みについて「いいことだと思う。業界は迅速な対応を望んでいる」とブルームバーグ・ニュースとのインタビューで述べた。

    利害

      ザッカーバーグ氏の方針転換が、彼自身の個人的な信念の変化を反映したものなのか、それともビジネス上の計算された動きなのかはわからない。だが同氏には次期政権と良好な関係を築くべき明確な動機がある。

    Notre-Dame Cathedral Reopens After 2019 Devastating Fire
    米国のトランプ次期大統領
     Photographer: Nathan Laine/Bloomberg

      トランプ氏は1期目の任期中、ソーシャルメディア企業の免責を定めた通信品位法230条を撤廃しなければ、国防予算案に拒否権を発動すると議会に迫った経緯がある。

      加えてメタは、独占禁止法に関する重大な裁判を今年控えている。連邦取引委員会(FTC)は同社に対し、インスタグラムやワッツアップなど主要なサービスの一部を分社化させようとしている。トランプ大統領と友好的な関係を築けば、メタにとって最も危険な課題を回避できる可能性がある。

      フェイスブックの元公共政策ディレクターで、ワシントンに拠点を置くテクノロジー政策助言会社「アンカーチェンジ」のケイティ・ハーバスCEOは「AIから運営方法に至るまで、フェイスブックの将来がトランプ政権の決定に大きく影響を受けるため、同社は適応しようとしている」と指摘する。

    マスク氏のよう

      ファクトチェックの方針変更にあたり、ザッカーバーグ氏は「コミュニティノート」方式を採用すると述べた。投稿の正確性について一般ユーザーが意見を述べたり投票したりできる、マスク氏のX(旧ツイッター)の機能に近いものになるという。

      ザッカーバーグ氏の発表は、今やトランプ氏側近中の側近となったマスク氏の発言と、非常に似通っていると多くの人々は受け止めた。ザッカーバーグ氏は信頼と安全、改良を担うメタのチームをカリフォルニア州から移転させるとも述べた。マスク氏も以前、サンフランシスコが左派寄り過ぎるとの考えから、X本社をカリフォルニア州から移転させた。

      今回の変更で、メタはヘイト行為に関するポリシーも更新した。その中にはトランスジェンダーの権利、移民、同性愛について議論する際の侮辱的な言葉遣いを許容する条項や、軍、法執行機関、教育職における性別や性的指向に基づく制限の主張を認める条項が含まれていた。また女性を「家庭内の物や財産」と表現する言葉や、黒人、トランスジェンダー、性自認が男女どちらでもないノンバイナリーを人間扱いしない表現から、利用者を保護する内容も削除された。

      トランプ氏とマスク氏は、特に移民やトランスジェンダーの人々に関するこうした暴言がネット上で一般化する流れに一役買っている。時に虚偽で、メタのヘイト行為に対する以前のポリシーには違反する両氏の発言や投稿は、オンライン上での対立や怒りをあおっている。

      LGBTQメディアの擁護団体GLAADのサラ・ケイト・エリス代表は声明で「LGBTQの人々や女性、移民、その他の疎外されたグループを暴力や暴言、非人間的な表現で標的にすることを、メタは許容している」と非難。ポリシーの変更により、メタのプラットフォームは利用者と広告主の両方にとって安全ではなくなると述べた。

    原題:Zuckerberg Pivots Harder Toward Trump as Political Winds Shift(抜粋)

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