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元日本銀行理事(金融政策担当)の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストは、外国為替市場で円安がさらに進めば、日銀の追加利上げの判断に影響を与える可能性があるとの見解を示した。
門間氏は、円相場が対ドルで「さらに150円、155円まで下落し、人々が円安と物価上昇を懸念し始めたら、日銀は次の利上げのタイミングを早めることになるだろう」と語った。ブルームバーグ東京支局で10日に開催されたイベントのパネル討論会で英語で述べた。
同日の外国為替市場の円相場は対ドルで一時1ドル=149円50銭台に下落。米国景気の軟着陸期待などで米利下げ観測が後退する中、心理的節目の150円に接近した。円安による物価上昇が改めて意識される中、門間氏の発言は円安が日銀の追加利上げ判断の重要な材料になり得ることを示すものだ。
日銀は円安による物価見通しの上振れリスクに配慮し、7月の金融政策決定会合で追加利上げを決定した。9月の会合前にブルームバーグが実施したエコノミスト調査では、12月を筆頭に来年1月までの追加利上げを9割近くが予想している。
日銀前副総裁の若田部昌澄早稲田大学政治経済学術院教授は同討論会で、「為替レートからインフレ率への転嫁が大きくなっている可能性があることは理解している」としながらも、「為替レートがインフレ率にどの程度影響を与えるかはあまり明確ではない」と指摘。7月の利上げは時期尚早だったとし、為替レートに影響されて政策決定を行うことは「重大な過ち」だとの見解を示した。
石破政権と日銀
日銀の金融政策を巡っては、石破茂首相が首相就任後の2日に、「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」との見解を表明。ただ、翌日には政策判断に「時間的余裕はある」とした植田和男総裁の認識を念頭にしたと釈明するなど、一連の発言が相場を大きく動かす要因となった。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは同討論会で、市場関係者の間で石破政権がタカ派的な政策を取るとの懸念は後退したが、総選挙を経て「今やどれくらい石破政権が続くかに目を向け始めている」との見方を示した。
石破首相は9日、衆院解散に踏み切った。首相就任から8日後の解散は戦後最短で、与野党は事実上の選挙戦に突入した。総選挙は15日公示・27日投開票の日程で実施される。
若田部氏は、石破首相の言動にぶれがあるため「選挙の後、何が起きるかが分からない」としつつも、2013年の政府・日銀の共同声明を再確認したことを評価した。首相側近の赤沢亮正経済再生担当相については、「金融政策の重要性を理解し、今が非常に重要な時期であることも分かっている」と指摘。デフレ脱却に向けた役割に期待感も示していた。
門間氏は、円安がさらに進めば首相はよりタカ派的になるかもしれないと指摘。円が安定した状態で経済が緩やかに回復すれば日銀は利上げの時期だと判断するのに対し、地方経済は後れを取る公算が大きいとの見方を示した。首相は地方経済や中小企業を重視する姿勢のため、日銀と首相のマクロの考え方が少し違ってくるかもしれないと語った。
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