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マーク・テシエラビーン氏は、その輝かしい研究成果で極めて高い評価を学界で得ていた。
ローズ奨学生から神経科学者となった同氏は、アルツハイマー病の原因に関する画期的な研究で知られる。その実績により米スタンフォード大学の学長に就任し、シリコンバレーからの寄付金集めにも多大な貢献を果たした。
テシエラビーン氏が何十年も避けてきた問題が浮き彫りになったのは、スタンフォード大の学生、学内新聞スタンフォード・デーリーでテオ・ベイカー氏(18)の記事が報じられたことがきっかけだった。
昨年11月に初めて掲載された一連の記事は、テシエラビーン氏の研究における誠実さと同氏が誤りに対処しなかったことに疑問を投げかけた。
結局、世界的な名門大学の学長を失脚させることになったのは、科学的記録の誤りを正すことを20年余りにわたり「断固」として拒否してきたことだった。
テシエラビーン氏は19日、突然辞意を表明。スタンフォード大の理事会がスタンフォード・デーリー紙の主張の一部を認める報告書を公表した後だった。ただ、この報告書は研究不正の可能性に関する同紙の以前の報道に同意するには至らなかった。
ベイカー氏は「広く引用された論文5本の科学的記録の訂正に学生の報道が寄与したことを示すものであり、懸念を明るみに出す独立した学生メディアの力を如実に示すものだと思う」とツイッターに投稿した。
テシエラビーン氏は、脳・脊髄研究のリーダーとして数十年活躍した後、カリフォルニア州にあるスタンフォード大学の学長に2016年に就任。それまではニューヨークでロックフェラー大学の学長をしていた。
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同氏の研究は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの変性疾患の原因と治療や脊髄損傷の治療開発に重点を置いていた。ロックフェラー大の学長に就く前は、米製薬会社ジェネンテックで最高科学責任者を務めていた。
称賛
テシエラビーン氏はシリコンバレーからの寄付金集めに秀で、ハーバード大学を上回る資金調達に成功した年もあった。
スタンフォード大の寄付基金が360億ドル(約5兆円)余り増加したことにも貢献。ベンチャーキャピタリストのジョン・ドエル氏から寄付11億ドルを受け、スタンフォード・ドエル・スクール・オブ・サステイナビリティーの設立を支援したのはつい昨年だ。
スタンフォード・デーリー紙は一連の記事で、テシエラビーン氏の研究不正疑惑について詳報。その一つが、アルツハイマー病の原因とされるタンパク質の関与を理解するための研究についてで、同氏が共同執筆し、英科学誌ネイチャーに09年に掲載された論文に記されていた。
当初、この研究結果は広く称賛された。しかし、重要な研究を検証する重要なステップである実験の再現を通じて同じ成果が得られるか試みられたが失敗。結局、研究結果は間違っていることが判明した。
スタンフォード・デーリー紙によれば、研究データは操作されていたが、テシエラビーン氏はそれを訂正することに抵抗していたという。
この論文の発表当時、同氏はジェネンテックで勤務していた。同社はコメントを控えたが、今年4月に発表したテシエラビーン氏の研究に関するリポートを参照するよう求めた。
ジェネンテックはこの時、調査委員会による審査の結果として 「詐欺・不正行為の疑惑を裏付けるものはない」としながらも、「これらの出来事が何年も前に起こったことを考えると、われわれの現在の記録は完全ではないかもしれない」と認めていた。
後悔
スタンフォード大の卒業生やヤフーの共同創業者であるジェリー・ヤン氏が率いる同大理事会の特別委員会が、この疑惑の調査を開始したのは昨年12月。
こうしてまとまった報告書では、テシエラビーン氏が2本の論文について公表されていない訂正に対応していないことが指摘された。
同氏は学校関係者へのメッセージで、自分の研究が載った2つの刊行物に訂正を掲載しようとしたが、出版社が拒否したか、掲載しなかったと説明。「訂正を求める際、もっと真剣であるべきだったし、そうでなかったことを悔やんでいる」とコメント。
「調査では、私の研究室の他の者による研究データ操作の例も特定されていた。私はこれらの問題に気付いていなかったが、私は研究室のメンバーの研究に対して責任を負っていることを明確にしたいと思う」と表明した。
スタンフォード大の理事会によると、テシエラビーン氏は学長を8月末に退くが、その後も教授として同大にとどまる。
原題:Stanford Student Uncovered Scandal That Took Down a President (抜粋)