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    【コラム】ChatGPTの挑戦、応じるグーグルの秘密兵器とは-オルソン

    The OpenAI website Dall-E about page on a smartphone arranged in the Brooklyn borough of New York, US, on Thursday, Jan. 12, 2023. 

    The OpenAI website Dall-E about page on a smartphone arranged in the Brooklyn borough of New York, US, on Thursday, Jan. 12, 2023. 

    Photographer: Gabby Jones/Bloomberg

    世界の大手テクノロジー企業のうち、「イノベーターのジレンマ」に最も深く悩まされているのが米アルファベットかもしれない。ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が説いた同理論によれば、大企業がイノベーションに苦労するのは、既存ビジネスへのダメージを恐れるからだ。 

      アルファベットは現在、オープンAIが開発した「ChatGPT(チャットGPT)」への対応で大きな圧力にさらされている。あらゆる質問に驚くほど自然な会話で回答するチャットGPTは、ネット検索の世界を一変させる可能性があるからだ。しかし、グーグルは慎重にならざるを得ない。1500億ドル(約19兆7000億円)規模の同社検索ビジネスはユーザーが広告やリンクをクリックするたびに収益を得ているが、検索に対して単一の回答が生成されるようになれば、そうしたクリックは失われるかもしれない。

      それでも、アルファベットのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は、リスクを取る以外の選択肢はもはや残されていないと判断したようだ。

      ピチャイ氏は2日、昨年10-12月(第4四半期)決算を発表した際、同社が開発したAIベースの大規模言語モデル「LaMDA」を「今後数週間や数カ月」で利用可能にするとし、ユーザーはそれを「検索の相棒」として使えるようになると語った。

      「AIへの注力」を掲げるのは現在の大手テクノロジー企業では当たり前のことだ。マーク・ザッカーバーグ氏も先に、AIがフェイスブックの各プロダクトの改善にどうつながるかを説明した際、同じようなことを語っていた。しかしAIについて言えば、グーグルは恐らく他社よりも高い信頼を得ていると言える。AIの最先端アプローチである強化学習や深層学習のパイオニア的存在「ディープマインド」を傘下に持ち、チャットGPTを動かす学習モデル「トランスフォーマー」を開発したのもグーグルの研究者たちだ。

      LaMDAはネット上の膨大な数の言葉で訓練された大規模言語モデルであり、それはチャットGPTのモデルも同様だ。ただ、LaMDAの方が優れている可能性が高い。LaMDAは大量のユーザーからのフィードバックはもちろんのこと、グーグルの幅広い研究人材と莫大(ばくだい)なコンピューティングパワーの恩恵を受けている。グーグルには、LaMDAが感情を持ったとさえ主張したエンジニアもいる。

      しかし、ここでイノベーターのジレンマの問題が出てくる。グーグルはLaMDAがグーグル検索の結果とカニバリゼーション(共食い)を起こしたり、攻撃的な言葉を使ったり、大きく間違った回答を出したりする可能性を懸念する。チャットGPTは不正確な回答があることでも知られるようになったが、オープンAIは比較的小さな組織であるため、それでも許されている面がある。1日当たり35億回の検索回数を誇るグーグルにそんなぜいたくは許されない。

      チャットGPTがグーグル検索と同じようには使われていないことを踏まえると、グーグルがチャットボットを検索にどう組む込むかが重要になる。グーグル検索キーワードの上位に来るのはフェイスブックやユーチューブ、アマゾンなどブランド名が多い。これは、人々がグーグル経由で他のサイトに移ることが多いためだ。他に検索ワードで人気なのは「近くのレストラン」などで、これらはチャットGPTで使われるような言葉ではない一方、グーグルにとっては利益を生み出すものだ。

      グーグルは恐らく、画像や地図、ニュースと並んで「会話型回答」を検索カテゴリーに追加するのだろう。この「検索の相棒」は料理のレシピや歴史的事件といった、グーグルの利益にはさほどならないロングテールの情報検索に使われることになるはずだ。

      その際、グーグルが細心の注意を払わなくてはならないのは、間違ったアドバイスの責任を負わないようにすることだ。健康に不安のある人が自分の症状をグーグル検索するのは当たり前になっているが、「会話型回答」で不適切な医療アドバイスを受けたとなれば、グーグルは新たな法的問題を抱え込むことになりかねない。

      グーグルはこれまで、企業の買収を通じて強力な広告テクノロジー(アドテク)事業を構築してきた。しかしジェネレーティブ(生成系)AIの強化で同じ手法は使えない。米司法省はデジタル広告市場において違法な独占の疑いがあるとしてグーグルを提訴し、アドテク事業の分割を求めている。

      グーグルにとって皮肉なのは、支配的であり過ぎることと、競争力が十分でないことの両方から大きな向かい風に直面していることだ。この試練を乗り切るには、イノベーションへの慎重な姿勢を脇に置き、社内の専門知識を活用して、マイクロソフトが出資するオープンAIからの挑戦に応じなくてはならない。ピチャイ氏が「今後数週間」で新サービスを開始できる可能性に言及したのは、同氏がチャットGPTをどれほど脅威と見ているかを示すものだ。グーグルは通常、ここまで速くは動かない。秘密兵器の投入を急ぐあまりつまずくことのないようにすべきだ。

    (筆者のパーミー・オルソンはブルームバーグ・オピニオンのコラムニスト。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)やフォーブスで記者経験があり、著書に「我々はアノニマス」など。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

    原題:Google Will Fight ChatGPT With Secret Weapon LaMDA: Parmy Olson(抜粋)

      This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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