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    日銀総裁は政策の信頼性を優先、円安は黙認か-0.25%を堅持

    更新日時
    • 日本国債利回りにも上昇圧力、日銀は積極的な買いオペ迫られる
    • 日米金融政策の方向性の違い、円は対ドルで15年以来の安値に下落
    日銀の黒田総裁

    日銀の黒田総裁

    Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

    日本銀行の黒田東彦総裁は、長期債利回りをゼロ%程度で推移させるという目標を堅持する意向だ。各国中銀の政策との違いが一段と広がり、円相場の下落を招いている。

      持続的な2%程度の物価上昇を目指し、黒田総裁が2016年に導入した政策枠組みの信頼性が問われている。世界的な債券相場の急落で日本の債券利回りにも上昇圧力がかかる中、日銀は今月、日本国債の買い入れを繰り返し行わざるを得ない状況に追い込まれている。

      オーストラリア準備銀行(RBA)がわずか数カ月前にイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の停止を余儀なくされたことを踏まえると、黒田総裁の決断に市場には疑問の声がある。日本の家計の購買力を低下させる円の急落が脆弱(ぜいじゃく)な経済回復を頓挫させる恐れがあることからも懐疑的な見方が広がっている。

    Growing gap between U.S., Japan yields has weakened the yen as policy diverges
     
     

      31日公表される今後3カ月間の長期国債買い入れ方針に注目が集まっている。28日には10年国債を0.25%で無制限に買い入れる指し値オペを一定期間行う「連続指し値オペ制度」を初めて発動することを発表。30日には予定していなかった臨時の国債買い入れオペを行った。10年債利回りを日銀の許容変動幅の上限を超えて押し上げようとする投資家の動きを落ち着かせることが狙い。

      もっとも、タカ派姿勢を強める米連邦準備制度と日銀の乖離(かいり)に為替トレーダーが反応する中、さらなる円安進行という代償を負いかねない。2%の物価安定目標の達成を目指す黒田総裁にとっては、10年間の任期の締めくくりとして厄介な1年となるだろう。

      黒田総裁による異次元緩和の導入時に審議委員を務めていた白井さゆり慶応義塾大学教授は、「黒田総裁は円安のリスクがあるからといって金融緩和を後退させるべきではないと理解している」と述べた。その上で、「物価のために政策をしてきたのに円安のために調整を始めると市場に大きな混乱が生じる。日銀とRBAを一緒にしないほうが良い」との認識を示した。

    Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda New Conference
    日本銀行の黒田東彦総裁
    Source: Bloomberg

      黒田総裁は30日、官邸で岸田文雄首相と会談。終了後、指し値オペなど金融市場調節は最近の円安に直接的に影響を与えていないと記者団に語った。コロナやロシアのウクライナ侵略を含め内外経済について説明したが、岸田首相からは特に要請はなかったという。

    円安に金融調節影響せず、背景に米金利上昇-日銀総裁が首相と会談

      両者の会談は、政府がエネルギー価格の上昇と円安による影響の緩和措置を講じる一方で、日銀は需要主導の持続的な物価上昇を目指して金融緩和を継続するということが、現時点でコンセンサスであることを示唆している。

      ただ、今夏に参議院選挙を控える岸田政権が日銀のスタンスを支持し続ける保証はない。新たなプレッシャーがかかるようなら、支持の強さが試される可能性もある。ソシエテ・ジェネラル証券の剱崎仁調査部長らエコノミストは、黒田総裁に政策転換を迫り得る水準を1ドル=130円とみる。

      剱崎氏は、円が130円に到達しても黒田総裁が引き締めに動くとは思わないが、目標とする長期金利の許容変動幅拡大などの調整を行うのではないかと指摘。「もし中央銀行が今まで掲げてきた目標を達成せずに方向転換をすると信用を失う。それは非常に大きな損失となる」と述べた。

    原題:Kuroda Favors BOJ Policy Credibility at Cost of Weakening Yen(抜粋)

     

    (7段落目以降を追加して更新しました)
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