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欧州連合(EU)域内の主流派政党は、欧州議会選挙でポピュリスト政党からの攻勢をよそに自らの足場を堅持した。過去20年で最高となった投票率は、親EU的な姿勢を取るリベラル派と緑の党に有利に働いたようだ。
投票締め切り後に公表された正式な開票速報によれば、外国人受け入れに消極的でEUの権限縮小を望み、中道派グループのなれ合いを嫌悪するポピュリスト政党は、一部の主流政治家が恐れていたほどの好調ではないもよう。
こうしたEU全体のトレンドに例外的な動きだったのはフランスとイタリアだ。マクロン仏大統領は今回の選挙をEUへの賛否を問う選挙だと明言していたが、開票作業が5割余りに達した段階では、マリーヌ・ルペン氏の極右政党・国民連合(旧国民戦線)に敗北する見通しが濃厚。
イタリア国営放送RAIの予測によると、同国ではサルビーニ副首相が率いる「同盟」が30%の票を獲得し、昨年の総選挙での17%を大きく上回った。一方、野党で中道左派の民主党は、同盟と連立を組む「五つ星運動」を得票率で上回った。
欧州全域の結果での焦点は、直接選挙が始まって以来40年間にわたり続いてきたように、中道右派と中道左派が欧州議会で過半数議席を維持できるかだ。
最新の暫定開票結果によると、中道の2つの会派は44%の議席を確保する見通しで、2014年選挙の56%から後退。一方、企業寄りのリベラル派と緑の党はそれぞれ14%と9%(14年は各9%と7%)で、最大の勝者となりそうだ。反エスタブリッシュメント政党とユーロ懐疑派政党、ポピュリスト政党を集めた得票率は29%となる見込みで、現在の議会での30%をやや回る。これらの政党は欧州の重要問題の一部で意見が異なり、これまでは連携できていなかった。
暫定結果通りとなれば、EUは現在の政策をおおむね継続する公算が大きい。トランプ米大統領の保護主義的な貿易政策とは距離を置き、徐々にユーロ圏の統合を進めるほか、EU域外からの移民の受け入れ負担を分担する方法を模索し、英国のEU離脱交渉再開の試みには断固反対する態度を取ることになりそうだ。また、欧州委員長や欧州中央銀行(ECB)総裁といった域内のトップ人事にも今回の選挙結果は影響しそうだ。
ドイツでは、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が明らかな勝者ではあるものの、得票率は推定29%で、14年の前回選挙時の35%を下回る。メルケル政権を支える連立与党の一角、社会民主党(SPD)は15.5%(14年は27%)に後退。一方で緑の党は21%で第2党に躍進。ドイツのための選択肢(AfD)は過去最高の11%。予想は下回りながらも14年の7%から増加したもよう。
ギリシャでは、欧州議会選で与党が中道右派の野党・新民主主義党(ND)に大敗したことを受けチプラス首相が6月末か7月前半にも解散総選挙を実施する意向を表明した。
欧州全般を見渡しても、ユーロ懐疑派政党が突破口を開けない同様の構図が見られる。
- デンマークでは、ナショナリズムを掲げる国民党の得票が12%弱と、前回の国政選挙の21%から後退する見通しが出口調査で示された
- スペインではほぼ全ての開票が終了し、与党・社会労働党が最大の議席を獲得。中道右派の国民党は第2党に
- オーストリアでは、クルツ首相率いる保守派の与党・国民党が得票率を約8ポイント伸ばし34.9%を獲得したことが最終予測に示されている
原題:Populist Attack on EU Falls Short Despite Gains in France, Italy(抜粋)