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    日銀のREIT購入もう必要ない、不動産融資に影響-宮野谷前理事

    • 地銀のリスク傾注、中央銀行が買い続けていることが背中押している
    • 貸し出し毀損と有価証券の両方でダメージ、バブル期と異なるリスク

    前日本銀行理事の宮野谷篤氏は、金融機関の不動産向け融資がバブル期並みの過熱サインを示したことついて、日銀による不動産投資信託(J-REIT)購入が投資行動に影響を及ぼした可能性があるとして、REIT購入はもう必要ないとの見方を示した。

      22日のインタビューで、日銀のREIT購入が安全資産からリスク資産や貸し出しにシフトするポートフォリオ・リバランスを促す「呼び水」になっており、「金融機関の投資行動に及ぼした影響はある」と述べた。日銀は2%の物価目標の実現を目指し、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みの下で、年間約900億円ペースでREITを買い入れている。

    膨張する不動産融資

    不動産融資残高は異次元緩和が始まって以来3割増加した

    出所:日本銀行

      日銀金融機構局が17日公表した金融システムリポートで、14の金融活動指標の基調からの乖離(かいり)を色で識別したヒートマップのうち、不動産業向け貸し出しの対国内総生産(GDP)比が1990年末以来初めて過熱を示す「赤」が点灯した。

    Daily Life in Tokyo's CBD Ahead of the BOJ's Tankan Report

    東京都心の商業用不動産

    Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

      宮野谷氏は、日銀が大量に国債を購入し、長期金利がほぼゼロ%の下、地方銀行が「利ざやを稼げなくなったのは相当痛い」と指摘。地銀がリスク資産に傾注していることについて「中央銀行が買い続けていることがやはり背中を押している」と述べた。同氏は日銀で金融システムを担当する金融機構局長、理事を歴任し、昨年5月に退任。現在はNTTデータ経営研究所会長を務める。

      日銀が2013年4月に異次元緩和を開始した際、ポートフォリオ・リバランス効果を狙いの一つに挙げた。黒田東彦総裁は導入後の会見で「ポートフォリオがシフトしていく先にはいろいろな資産、例えば株や外債やその他たくさんある」とした上で、その効果は「かなり期待できるのではないか」と述べていた。  

    バブル期と異なるリスク

      金融システムリポートは、不動産市場全体が「バブル期のような過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい」と分析したが、金融機関の貸し出し態度判断DIや総与信・GDP比、企業向け与信の対GDP比、企業設備投資の対GDP比は赤に接近。宮野谷氏は「次回10月はこのどれかが赤になっていく。バブル期と比較してまだ大丈夫だとあまり安易には言えない」と予想した。

      同リポートは、不動産業向け貸出比率を高める金融機関ほど「自己資本比率が低い傾向」があると指摘。REITや私募REITなど不動産ファンド向け出資も地銀を中心に近年大きく増加しており、不動産市況の悪化局面で「貸し出しよりも大きく価値が毀損(きそん)し得る」と警告した。地銀の黒字決算を支えてきた含み益も、金融機関の半数で2021年度に枯渇するとの試算を示した。

      宮野谷氏は、そろそろ景気は転換点かもしれないため、含み益とともに利益を下支えした信用コストも「利益を押し下げる局面に入っている可能性」があり、地銀は「実力通りの決算しかできなくなってくる」と指摘。内外で不動産価格下落などショックが起きると「貸し出しの毀損だけでなく有価証券もやられ、両方で打撃を食らう度合いが強くなっていることもバブル期とは違う」と述べた。

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