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日韓両政府は28日午後、ソウルで外相会談を開き、懸案になっていた旧日本軍の従軍慰安婦問題を最終的に解決することで合意した。元慰安婦支援のため日本政府が10億円規模を拠出することなどが前提となっている。
岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相がソウルで会談後に共同記者発表した。岸田外相によると、安倍晋三首相が元慰安婦に「心からおわびと反省の気持ち」を表明、韓国政府が設立する財団に日本政府が10億円程度を一括拠出し元慰安婦支援を行う。両外相とも、これらの実行を前提に慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」され、国際社会で「互いに非難・批判することを控える」ことを確認した。
北東アジアで中国の存在感が急速に高まる中で、日韓関係の改善は米国にとっても懸案だった。オバマ米大統領は10月、ワシントンで開いた朴槿恵大統領との共同会見で、中国が国際的なルールを守らない場合は米国と協調するよう求めた上で、日本とも歴史問題を解決して関係を改善するよう促した。11月にソウルで安倍首相と朴大統領が会談した際には、慰安婦問題の早期妥結を目指すことを確認していた。
岸田外相は共同記者発表後の単独の会見で、合意は「歴史的であり、画期的な成果」と強調。「日韓、そして日米韓の安保協力が前進する素地ができた」と位置付け、「北東アジア地域の安全保障の現状を踏まえると、わが国の国益にも大きく資するのみならず、この地域の平和と安定に大きく貢献し得る」と意義を語った。
安倍首相は合意を受けて記者団に対し、「子や孫、その先の世代に謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない」と強調し、「新しい時代を日韓両国が力を合わせて切り開いていくきっかけにしたい」と述べた。共同発表や会見、首相発言はいずれもNHKが中継した。
安倍首相はこの後、朴大統領とも電話で直接会談した。世耕弘成官房副長官の記者団への説明によると、安倍首相が元慰安婦への「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明すると、朴大統領は「安倍総理の言葉が慰安婦にしっかりと伝わるようにしたい」と応じたという。また首相が安保協力を具体的に進めたいと求めたのに対し、大統領は北朝鮮の核問題をはじめ緊密に協力してきたが今後も続けていきたいと述べた、という。
少女像は「適切に解決」
会見で岸田氏は、政府の拠出は日韓の協力事業であり「賠償ではない」と説明。在韓国日本大使館前に設置されている慰安婦を象徴する少女像については「適切な移転がなされるものだと認識している」と話した。韓国の尹外相は共同発表で、少女像をめぐって「関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と述べていた。
慰安婦問題は軍による強制連行があったかどうかも1つの焦点だった。合意内容の「当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から日本政府は責任を痛感している」との表現について、岸田氏は「この表現に尽きるのであり、それ以上でもそれ以下でもない」と発言。さらに「慰安婦問題は当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題であるという認識は従来から表明してきたもの」と述べた。
28日付の日経新聞の世論調査では、安倍首相が進めている日韓両国の関係改善について「評価する」は75%に上り、「評価しない」の14%を大きく上回った。慰安婦問題では日本が「譲歩する必要はない」は57%、「譲歩する必要がある」は24%だった。