私立通信制高校の大手「N高等学校」が労働基準法違反にもとづく是正勧告を受けたことをめぐり、運営する学校法人角川ドワンゴ学園は、労働組合「私学教員ユニオン」に抗議する内容のコメントを発表した。コメントは6月12日付。
●「記者会見の主張内容と事実には大きな乖離がある」
私学教員ユニオンは6月11日、都内で記者会見を開いて、是正勧告があったことを公表。ある組合員は最も多い月に「90時間」を超える残業(労基署の認定は66時間)があったと主張していた。
一方、角川ドワンゴ学園は、是正勧告を受けたことは事実としながらも、私学教員ユニオンが記者会見で主張している内容と事実には大きな乖離がある、と反論している。
「当学園の調査の結果、当該教員が90時間残業したと主張している月の残業時間は42時間でした。また、土日祝日の出勤が3回発生しており、土日祝日の出勤による勤務時間24時間を合わせると66時間となります。
なお、当該教員は、休日出勤分について、その後別の月に振替休日を取得しています。
代休を伴う休日出勤の賃金の支払い方法については、別途記載の労働基準監督署からの是正勧告の通りの不備がございました」
●「実際の残業時間よりも多い残業手当を受け取っている」
また、私学教員ユニオンは会見で、教員1人あたり150人(3年生は80人)を担任するため、休憩が十分にとれない"激務"だったという説明をおこなっていた。
こちらについて、角川ドワンゴ学園は、教員1人あたりの担任生徒数に関して認めながらも「教員が過重労働を強いられており、生徒へのケアも十分にできていない」という点は、まったく事実にあたらないとしている。
「当学園は全日制高校とは異なり通信制高校であること、また分業制を進めていることから、生徒ひとりひとりへ割ける時間は、むしろ多いと考えております」
「過重労働と言われている点につきましては、事実として、ネットコースの教員の平均残業時間は21.5時間です。見込み残業手当は40時間分支払っておりますので、教員の大多数は実際の残業時間よりも多い残業手当を受け取っていることになります。
また、見込み残業時間を超えて残業を行った教員には割増の残業手当を支払っており、サービス残業は禁じています」
●「過重労働である明確な事実は示されていない」
角川ドワンゴ学園によると、私学教員ユニオンから指摘を受けた「休憩時間が十分に取れない場合があること」については、調査の結果、事実だと判明したので、速やかに改善措置を取ったという。
一方、過重労働であることや、担任する生徒が多すぎて生徒のケアができないことについては、私学教員ユニオンから問題となる事実は具体的に示されていないとしている。
「当学園では、もし問題となる事実があれば速やかに是正するので教えて欲しい旨を私学教員ユニオンに対して第1回の団体交渉で伝えております。
しかしながら、明確な事実を示していただけていない状況です。今回の記者会見においても、同様の主張を繰り返されたことを残念に思います。
今回の労働基準監督署からの是正勧告に、当学園が不当に長時間の残業を強いているという内容や残業代の不払いがあるような内容は、一切、含まれておりません。そのような具体的事実がないからです」