荒木飛呂彦氏の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部「ダイヤモンドは砕けない」のテレビアニメが2016年4月から放送されることが決まり、ファンが放送を心待ちにしている。
第4部の物語は、第3部の主人公・空条承太郎が、4部の主人公・東方仗助の住むM県S市の杜王町にやってくるところからはじまる。来訪の目的のひとつは、空条承太郎の祖父であるジョセフ・ジョースターが、仗助の父親であり、財産を相続する権利があることを伝えるためだ。
ジョセフは第2部の主人公で、既婚者だが、60代のときに当時女子大生だった東方朋子と不倫関係になった。その際に生まれたのが仗助だ。ジョセフには、本妻のスージーQと、その間に産まれたホリィという娘がいる。承太郎は、ホリィと日本人男性との間に産まれた息子だ。
複雑な関係だが、ジョセフにとって、仗助は愛人との間の息子、承太郎は本妻との間に産まれた娘の息子、つまり孫ということになる。
ジョセフは「ニューヨークの不動産王」ということになっている。財産も相当あるだろう。作品の舞台は1999年で、外国籍の人物も登場するが、もし、日本の相続ルールを当てはめると、ジョセフが死亡した場合、相続はどのように分配されるのだろうか。ジョジョの問題に詳しい松本常広弁護士に聞いた。
●ジョセフに「遺言」がなかった場合
「ジョセフが遺言を残さず死亡したと仮定すると、ジョセフの相続人は『原則』として、妻スージーQ、長女ホリィ、長男仗助ということになります。法定相続分は、スージーQが2分の1、ホリィが4分の1、仗助が4分の1です。不動産など遺産を具体的にどう分けるかは三者で遺産分割協議を行って決め、もめた場合は遺産分割調停を申し立てることになります」
「原則」ということは「例外」もあるのだろうか。
「ジョースター家の場合、仗助が非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子)であるため、さらに検討が必要になります。非嫡出子である仗助が相続権を主張するためには、ジョセフが仗助を『認知』している必要があるのです。
この点について、作中で承太郎が仗助の存在について『じじい自身も知らなかった』(コミックス29巻35ページ)と述べていることから、ジョセフは仗助を認知していなかったと考えられます。
そうすると、仗助が相続権を主張するためには、ジョセフの死亡の日から3年以内に検察官を被告として認知の訴えを提起する必要があります。これが認められれば、仗助は晴れて、遺産分割協議に参加することができるようになります」
●ジョセフに「遺言」があった場合
では、もし「遺言」があったら、どうなるのか。
「以上は法定相続分を前提とした話でしたが、ジョセフが遺言を残していれば、そちらが優先されます。ただし、この場合も遺留分(遺言によっても侵すことのできない相続人の権利)が各相続人に残ります」
作中で承太郎が仗助の相続分について「じじいの財産の3分の1がいくことになる」(コミックス29巻36ページ)と発言しているが、これはどういうことか。
「まず、ジョセフがスージーQ、ホリィ、仗助のそれぞれに3分の1ずつ相続させるという遺言を残している可能性が考えられます。
また、少し複雑ですが、スージーQが自己の相続分を放棄すると宣言している場合(かつ実際にジョセフの死後、相続放棄の手続きをとる場合)も考えられます。この場合、現在ではホリィ、仗助がそれぞれ2分の1ずつ相続することができるのですが、連載がスタートした1992年当時、民法上非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1とされていました。したがって、この場合ホリィが3分の2、仗助が3分の1という事態が生じることになります」
松本弁護士はこのように話していた。