たくさんの本が収蔵されている図書館。夏休みの宿題やレポートなどで活用する人も多いでしょう。
ただ、基本的に図書館では、資料のコピーは認められているのに、写真撮影は基本的に認められていません。コピーは手間がかかるし、閲覧する資料が多ければ多いほどかさばってしまいますよね。デジカメや携帯の写真なら、綺麗に撮れるし、お金もかかりません。
もちろん、コピーが図書館の収益や運営費にかかわるという面はあると思いますが、法律的に写真撮影を禁止する根拠はどうなっているのでしょうか。唐津真美弁護士に聞きました。
●撮影禁止に合理的な理由はある?
図書館に収蔵されている資料は、その大多数が、文字や写真、絵などで構成されている著作物です。著作物を写真撮影する行為は著作物の複製にあたるので、無断で写真撮影すると著作権侵害になるのが原則です。
もっとも、著作物の複製については、私的使用目的であれば、使用する本人は、著作権者の許諾を得なくても著作物の複製ができる、という例外規定があります。
「私的使用」の意味について、「少数のコピーなら大丈夫」と考えている人も多いようですが、著作権法上の「私的使用」の範囲は「個人的又は家庭内その他これに準じる限られた範囲」という狭いものであり、業務上のコピーは私的使用目的にはあたらないと一般的に考えられているので注意してください。
また、私的使用目的であれば、著作物の翻訳・編曲・変形・翻案を行うことも可能ですが、公衆送信(アップロード)には適用がありません。コピーや写真撮影した資料を自分のブログ等にあげないように注意してください。
なお、図書館における複製については著作権法31条に規定がありますが、同条は図書館自らが複製する場合について定めた規定であり、利用者自身による複製には30条(私的使用目的の複製に関する権利制限規定)が適用されるという解釈が一般的と思われます。
上で述べたように、著作権法の規定によれば、「私的に使用する目的ならば図書館の資料を写真撮影しても著作権侵害にはならない」という結論になります。しかし一方で、図書館という静寂な環境において、「カシャ」「カシャ」という写真撮影の音があちこちから響くようになると、読書を楽しんでいる他の利用者には多大な迷惑を及ぼすことになります。
このような悪影響を考えれば、図書館が、施設の管理者としての権限(施設管理権)に基づいて、デジタルカメラや携帯電話による資料の撮影を禁止することには、合理性があると考えます。
「資料の撮影禁止」と書いてある図書館で写真撮影を行い、係員が注意しても撮影をやめないような利用者がいる場合には、図書館がその利用者に退館するよう求めることも可能だと思われます。
「シャッター音が出ない設定にしてあればいいじゃないか」という意見もあると思いますが、少人数のスタッフで広い館内を管理するためには、「写真撮影禁止」というシンプルな規則にすることもやむを得ないのではないでしょうか。図書館には通常コイン式のコピー機が設置されていて一定の範囲のコピーができるようになっていますので、写真撮影を禁止される側の不利益は限定的といえるでしょう。
図書館の利用者は、著作権法の規定を盾に「写真撮影できるはずだ!」と主張するのではなく、図書館のルールも守って、利用者全員が快適に施設を利用できるように心掛けてほしいと思います。
【8月29日】
著作権法31条の規定について補足しました。