「ガキだよねあなたって」、「社会性がやっぱりちょっと欠けてるんだよね」、「もともと嘘つきやすい体質なんだから」、「詐欺師的な類型に片足突っ込んでると思うな」――。
黙秘を続ける被疑者に対し、検察官が侮辱的な言葉を投げかける約13分の映像が1月18日、YouTubeで公開された。実際の取り調べを映したものだ。
公開したのは、江口大和氏の弁護団。江口氏は侮辱されるなど違法な取り調べがあったとして国に1100万円を求める裁判を起こしている。
今回の映像は裁判所の勧告により、国から証拠として提出された取り調べの録音録画映像の一部(約2時間22分)をさらに編集したもので、この日、法廷でも上映された。
弁護団によると、実際の取り調べは合計21日、約56時間に及んだという。
●「あなたの言ってる黙秘権って何なんですか」
冒頭の発言のほかにも、映像からは担当した川村政史検察官から次のような発言があったことがわかる(日時のうしろは動画の時間)。
「何なのそれは。それは黙秘権の行使なんですか。あなたの言ってる黙秘権って何なんですか。全然理解できないんだけども。っていうか、あなた自身もわかってないんじゃないの。超筋悪ですね」(2018年10月21日、1:21)
「なんかあなたの中学校の成績見てたら、あんまり数学とか理科とか理系的なものが得意じゃなかったみたいですねえ。本はたくさん読んでたみたいだけど。なんかちょっと論理性がさあ、なんかずれてんだよなあ」(2018年11月1日、6:47)
「黙秘します、権利ですからって。そりゃ法律上は許されるかもしれないし、権利なのかもしれないけど」(2018年10月23日、10:34)
●「取り調べと称した罵詈雑言」は許されるか
今回の国賠訴訟で江口氏の代理人を務める趙誠峰弁護士は、映像公開について自身のブログに次のように綴っている。
「憲法が黙秘権を保障していることの意味は、権利を行使する人に対して捜査官は取調べと称してこのような罵詈雑言を浴びせることが許されないということではないのか。 私たちはこの裁判で黙秘権の意味を正面から問うています」
黙秘権を行使してもこのような取調べが約22日間、50時間以上も続けられるのが現実です。黙秘権の保障ってなんなんでしょうか。これに耐えなければならないなら、黙秘権って意味なくないですか?
— 趙 誠峰/CHO Seiho (@cho_seiho) January 18, 2024
取調べ録音録画を公開することにしました。https://t.co/CojQvVgUQM
●訴えたのは元弁護士
取り調べを受けた江口氏は元弁護士。事件関係者に虚偽の供述をさせたとして、犯人隠避教唆の疑いで横浜地検特別刑事部に逮捕された。一貫して無罪を主張したが有罪判決が確定し、弁護士資格を喪失した。
取り調べではこのほか、職業に関連して次のような発言も受けていた。
「まさに刑事弁護を趣味でしかやれない人。プロではない」(2018年10月21日、1:56)
「それじゃ無罪とれないですよ。 刑事弁護。まあ実際とれてないと思うけど。あなたの活動ではね。下手くそなんだよ。 やり方がね全然怖くないもん。うっとうしいだけ」(2018年10月28日、4:23)
「どうやったらこんな弁護士ができあがるんだ。そういえば弁護教官聞いてなかったな、刑弁教官。誰、刑弁教官。聞きにいこうかなあ、どういう教育してんだって。なんでこんなことになってんだって。 そうだ、調べりゃわかるから、ちょっとやるか。法廷に立ってもらうか。そういうのも必要だよねえ。おかしいよねえ、こんな弁護士生み出して。どういう教育してんの、司法研修所。まあいいや、ちょっと調べとくわ」(2018年10月27日、8:46)