イギリス暴動、有罪判決相次ぐ 禁錮6年も

イギリス各地の暴動にかかわった罪で数百人が起訴され、大勢が禁錮刑を言い渡されている
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7月末にイングランド北西部で起きた死傷事件をきっかけに2週間近くイギリス各地で相次いだ暴動について、イングランドとウェールズでは16日までに少なくとも395人が起訴された。複数の罪状が適用されている被告人もいる。

BBCニュースが精査した罪状548件のうち、暴力的な騒乱が251件で最も多く、救急隊員への暴行、いやがらせや脅迫なども続いて多かった。ソーシャルメディアなどオンラインでの不法行為で起訴された人も29人いた。

イングランド35カ所の騒乱に関連して起訴された395人の平均年齢は32歳。43人が18歳未満。

イングランドでは、北東部サンダーランド在住のキーラン・アッシャー被告(32)が、暴動罪で起訴されている。公共の秩序を乱した行為の罪状としては暴動罪が最も重く、最高刑は禁錮10年。ほかに15歳の少年も、暴動罪で起訴されている。

北アイルランドはイングランドおよびウェールズとは異なる法律で、騒乱行為を取り締まる。ベルファストでの騒ぎに関連して起訴された16人の罪状をBBCが調べたところ、最も多く適用されているのは暴動罪だった。

イギリス暴動に適用されている罪状

スキンケア用品店を略奪

これまでに言い渡された禁錮刑の中では、6年が最長。8月3日にイングランド北東部ハルで、ルーマニア人男性3人が乗った乗用車を襲った集団の中にいた、デイヴィッド・ウィルキンソン被告(48)が、禁錮6年を言い渡された。

この集団襲撃に参加したほか、さらにスキンケア用品で有名な「LUSH」の店舗を略奪する様子が撮影されていたジョン・ハニー被告(25)は、禁錮4年8カ月を言い渡された。

ジョン・ハニー被告(左)、デイヴィッド・ウィルキンソン被告(右)(ハンバーサイド警察提供)

画像提供, Humberside Police

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被告らは、ハル市内の道路を大勢で行進していた際、ルーマニア人たちの乗った乗用車に目を付け、「雄たけびを上げながら」これを取り囲み、車内から男性たちを引きずり出そうとした。

ハル地裁での公判で検察は、ハニー被告が後部座席のドアをこじ開け、車内の男性が身を守ろうとこれを閉じようとした様子を陳述した。

検察によると、ウィルキンソン被告は車のフロントガラスを破損した。

乗っていた男性たちはやがて、両手を挙げて車から脱出し、近くのホテルに避難したと検察は説明した。

量刑を言い渡したジョン・サックレー裁判長は、8月3日にハル市内で展開したのは「12時間にも及ぶ、人種差別と憎悪にまみれた暴徒の蛮行」だったと非難した。

裁判長は、ウィルキンソン、ハニー両被告が、襲撃した相手に危害を加え負傷させる危険度の高い事態を意図して作り出そうとしたとして、両者がかかわった暴動の映像を見るのは「恐ろしい」「沈痛な」経験だったと話した。

ハニー被告は「LUSH」店舗から商品を盗み出す様子が撮影されていた

画像提供, @senortrowell

画像説明, ハニー被告は「LUSH」店舗から商品を盗み出す様子が撮影されていた

検察によると、ウィルキンソン被告はこのほか、車庫の襲撃に参加。この事件では9台が破損した。

調べによると、被告はすでに燃えていたタイヤの山にさらに大型のごみ入れを放り投げてそれに火をつけようとした。このため、大勢が避難していた作業所のシャッター越しに室内に黒煙が流れ込んだ。

ウィルキンソン被告は、騒乱や人種差別、宗教などを動機にした器物損壊、放火未遂などについて有罪を認めた。

車庫襲撃にも参加したハニー被告も、騒乱や器物損壊のほか複数の店舗での強盗の罪を認めた。

マイケル・クイン検事は、ハニー被告の行動は「みっともなく、恥知らずで暴力的だった」と非難した。

動画説明, ハニー被告は「LUSH」店舗から商品を盗み出す様子のほか、警官隊に物を投げつける様子も撮影されていた

相次ぐ禁錮刑

16日にはこのほか、イングランド北西部ブラックブールでの暴動の「先頭に立ち扇動した」として、ロジャー・ヘイウッド被告(41)が、騒乱と救急隊員暴行の罪で有罪を認め、禁錮2年半を言い渡された。

イングランド北東部サンダーランドでの暴動に関連しては同日、ポール・ウィリアムズ被告(45)が騒乱罪で有罪を認め、禁錮2年2カ月を言い渡された。

公判では、被告が食べ物のテイクアウトを受け取りに街の中心部に向かったものの、「無軌道な破壊と暴力と無秩序のうず」の「最前線」にいつしかいたのだとの説明があった。

弁護人は、被告人には移民について特に政治的な意見はなく、「どうしてこの事態が始まったのかについて、そのもとの理由については、ほとんど知らなかった」のだと述べた。

検察によると被告は、警官隊に金属フェンスやビールの缶を投げつけ、シャツを脱いで機動隊の盾に向かって突進したのだという。

ロンドンのウェストミンスター治安判事裁判所では同日、7月31日に首相官邸近くで起きた騒ぎに参加した、スティーヴィー・マルライン被告(29)とチャールズ・スミス被告(22)にそれぞれ、禁錮23週間を言い渡した。

検察によると、マルライン被告は警察に向かって刺す仕草をして、侮蔑的な合言葉の連呼を扇動。スミス被告は警察に「対決姿勢を示し」、警官たちを侮辱したという。

イングランド北部ダーリントンでは同日、8月5日の衝突に参加したとしてアシュカン・カリーム被告(33)が禁錮12カ月を言い渡された。

被告は自分はモスク(イスラム教の礼拝所)を「人種差別主義者たち」から守ろうとしていたのだと公判で主張した。これに対して裁判長は、「人種差別や極右のスローガンを連呼」していた男たちに対抗するため集まったグループに、カリーム被告が参加していたと指摘。

ただし「そうすることで、暴力につながるのは明白だったし、実際にそうなった」と裁判長は述べた。

ほかにも16日には、ブリストル、シェフィールド、リヴァプール、プリマスなどイングランド各地で、騒乱について実刑判決が言い渡された。