イギリスは3年以内に戦争に備える必要ある 英陸軍トップが演説

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ジョナサン・ビール防衛担当編集委員、イアン・アイクマン(BBCニュース)

イギリスは3年以内に戦争ができるよう準備しなければならないと、同国陸軍の新トップが23日に語った。

6月に陸軍参謀総長に就任したローランド・ウォーカー陸軍大将は、「ますます不安定になる」世界におけるさまざまな脅威に対して警告を発した。

一方で、戦争は不可避ではないと述べ、陸軍には紛争を避ける準備をするのに「十分なだけの時間」があるとした。

そして、2027年までに陸軍の戦闘力を倍増させ、10年後までには3倍にすることが準備の核となるとした。

ウォーカー大将は23日の就任後初の演説で、イギリスは「激動の枢軸」による危険に直面していると述べた。

また、今後数年間にイギリスが直面する主要な脅威のひとつは、怒りに燃えるロシアだと強調。ロシアについては、ウクライナでの戦争の勝ち負けにかかわらず、ウクライナを支援した西側諸国への報復を探る可能性があるとした。

「問題は、戦争がどう終わるかではない。ロシアはこの戦争の後、客観的に、あるいは絶対的に、今よりも弱い状態になるはずだが、それでも非常に危険な存在で、ウクライナを助けるために我々がしたことに対して、何らかの報復を求めているだろう」

ウォーカー氏はさらに、中国は台湾を奪うつもりで、イランは核兵器を追求する可能性が高いと警告。これらの国々による脅威は、向こう3年以内に特に深刻なものになり得ると指摘した。

また、これらの国々はウクライナでの戦争以来、武器や技術を共有する「相互取引関係」を築いてきたと述べた。

しかし、イギリスが戦争回避のための抑止戦略を支える、信頼できる陸上戦力を再確立すれば、戦争への道は「不可避」ではないと述べた。

演説の中でウォーカー氏は、現在7万人強の正規軍を 「中規模軍」と表現したが、追加の予算や兵力を直接的に要求しなかった。その代りに、陸軍の迅速な近代化が必要だと強調。規模よりも、人工知能(AI)のような技術や、火力に重点を置くべきだと述べた。

最終的に自分が目指すのは、陸軍が自軍の3倍規模の敵を撃破できるようになることだと、ウォーカー氏は説明した。

そのためには、ウクライナでの戦争から得た教訓を生かし、より速く、より遠くの標的を狙えるようになることが重要だという。

今年6月に陸軍参謀総長に就任したローランド・ウォーカー陸軍大将

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画像説明, 今年6月に陸軍参謀総長に就任したローランド・ウォーカー陸軍大将

イギリスの労働党新政権は1週間前に、軍が直面する課題を「あらためて見直す」ため、防衛政策の「根源的かつ包括的な」再評価に着手した。

ジョン・ヒーリー国防相はこの見直しにあたり、軍隊の現状を「空洞化」と表現し、「調達の無駄と士気の低下を続けることはできない」と述べた。

2024年4月に発表された国防省の最新データによると、英陸軍の正規軍(グルカ隊と志願兵を除く)には現在、7万5325人が所属している。

正規軍の人員数はここ数年、採用が定着に追いつかず減少している。保守党の前政権は、2025年までの目標人員を8万2000人から7万2500人に削減していた。

北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、2024年までに国内総生産(GDP)比2%以上を防衛費に充てることを誓約しているが、いくつかの国はこの目標を達成できそうにない。

イギリスは現在、GDP比2.3%を防衛に費やしている。キア・スターマー首相は以前、国防見直しでこれを2.5%に引き上げるという目標へ向けて、「ロードマップ」を示すと述べているが、この公約の期限はまだ示されていない。

(英語記事 UK must be ready to fight war in three years, says Army head)