日本、アメリカにパトリオット・ミサイル輸出へ 「防衛装備移転三原則」を改定
大井真理子、BBCニュース

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日本政府は22日、「防衛装備移転三原則」を改定し、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」をアメリカへに輸出する方針を決定した。長年の平和主義政策からの転換となる。
米ホワイトハウスはこの動きを歓迎している。アメリカは日本のこの決定によって、自国の備蓄ミサイルをウクライナに送れるようになる。
西側諸国では、ロシアの侵攻を受けているウクライナへの弾薬供給が不足している。
パトリオット・ミサイルは、アメリカがウクライナに供給している中でも最先端の兵器の一つ。
日本はこれまで、ライセンスを持つ企業のある国から受注した「ライセンス生産品」の部品のみ、ライセンス元の国に送ることを認めていた。しかし新ルールでは、完成品も送ることができる。
政府が三原則の改定を発表した直後、外務省は自衛隊が保有するパトリオット・ミサイルの米軍への移転を発表した。声明で、同ミサイルを「米国に移転し、米軍の在庫を補完することは、米国との安全保障・防衛協力の強化に資するとともに、我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものであることを日米間で確認しており、我が国の安全保障の観点から積極的な意義を有する」と説明している。
また、インド太平洋地域以外に展開する米軍を含むアメリカ政府以外へ、さらに提供されないこと、目的外の使用や第三国への移転については、日本の事前同意を得ることを「米国政府に義務付ける」ことなどが、発表に盛り込まれている。
日本は引き続き、戦争当事者への武器輸出を禁止している。
ただし、今回の改正によって、アメリカは日本製のパトリオット・ミサイルで自国の備蓄を補充できるようになる。そうすれば、アメリカ政府は自国製の同型ミサイルをウクライナに送れるようになる。
日本では、アメリカ防衛大手ロッキード・マーティンとRTXのライセンスの下、三菱重工がパトリオット・ミサイルを製造している。
アメリカはかねて、日本に武器輸出のルール見直しを求めていたとされる。ルール変更は2014年以来となる。
米連邦議会は12月初め、ウクライナへの600億ドル相当の軍事支援を含む大型支出法案を否決。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はアメリカを訪問し、議会幹部らとも協議を重ねたが、交渉は実らなかった。
ウクライナは、国際社会の援助が減少しているため、すでに軍事作戦の縮小を余儀なくされていると警告している。ウクライナは数カ月前から、アメリカに防空支援の強化を求めている。
パトリオット・ミサイルに加えて、英紙フィナンシャル・タイムズは21日、日本が現在、英防衛大手BAEシステムズからライセンスを受けて製造している155ミリ砲弾について、イギリスへの輸出を検討していると、消息筋の話として伝えた。
どの部品をどの国に輸出するかは、日本の国家安全保障会議(NSC)がケースバイケースで決定することになる見通し。
今回のルール変更は、日本が長年の平和主義的な姿勢と自ら葛藤する中で行われた。
第2次世界大戦後、日本は自衛を除いて戦争を禁止する憲法を採択した。憲法は軍隊を公式に認めず、自衛能力に限定している。
当初制定された「武器輸出三原則」は武器輸出を全面禁止していたが、2014年の安倍政権下で50年ぶりに緩和され、「防衛装備移転三原則」となった。この動きに、中国は疑念を抱いた。
日本はさらに昨年、中国と北朝鮮の脅威を理由に、2027年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に倍増させると発表している。
日本が懸念を抱いているのは中国の軍拡の動きだ。もし台湾で紛争が起きれば、日本は米中戦争に巻き込まれるだけでなく、アメリカの同盟国として標的にされる可能性がある。日本には米軍基地があり、アメリカ国外では最大の兵力が集中している。
日本にとって北朝鮮もまた常時、国の存亡がかかる危険要素であり続ける。北朝鮮の今年のミサイル発射回数は過去最多で、そのうちの数発は、日本上空を通過した。それだけに、北朝鮮の核開発への野心に対して、危機感は高まっている。