WHO、中国が新型ウイルスの影響「過小評価」と警告 EUは渡航制限を「強く」奨励

画像提供, Reuters
世界保健機関(WHO)は4日、中国政府による新型コロナウイルス死者の定義は「非常に狭く」、「真の影響を過小評価」していると警告した。
中国は先月、新型ウイルス対策の厳しい「ゼロコロナ」政策を大幅に緩和。その後、感染者が急増している。
しかし中国側は日々の新型ウイルス関連データの公開を停止したほか、新たな集計方法を導入。12月以降の死者数はわずか22人だとしている。
中国が発表した集計方法の概要によると、死者数には肺炎などの呼吸器系疾患により死亡した人のみが含まれるという。こうした集計方法は世界保健機関(WHO)の指針に反するもので、結果的にほかの多くの国の死者数を大きく下回っている。パンデミック発生前の死亡率を基に通常予想される数より、どれだけ多くの人が死亡したかを示す超過死亡数を記録するよう、WHOは各国に奨励している。
WHOの健康危機担当マイケル・ライアン氏は中国について、新型ウイルスによる死者の「定義が狭すぎると考えている」と指摘。
そして中国の新型ウイルス関連の数字について、「入院者数、ICU(集中治療室)収容者数、とりわけ死者数に関して、この病気の真の影響を過小評価している」とした。
ライアン氏は、中国がここ数週間でWHOとの関わりを強めているとし、「より包括的なデータ」を受け取れることを期待していると述べた。
一方で、個々の医療従事者が自身が保持するデータや経験を報告できることも示唆した。
「我々は、こうした死亡例や症例を報告することを医師や看護師に思いとどまらせたりはしない」と、ライアン氏は述べた。「我々には社会における、病気による実際の影響を記録できるオープンなアプローチがある」。
イギリス拠点の保健データ企業「エアフィニティー」は、中国の1日あたりの感染者数は200万人以上で、1万4700人が死亡していると推定している。
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中国では感染者が急増しているにも関わらず、新たな変異株は検出されていない。WHOは中国国内でウイルス検査数が減少していることが要因である可能性があると警告している。
WHOのアラートおよび対応調整部門ディレクター、アブディ・ラーマン・マハムド博士は、21日から始まる春節(旧正月)の休みに多くの家族が集まり、中国で新たな感染の波が起きるかもしれないと警告している。中国では毎年、旧正月の1週間を家族と共に過ごそうと、何百万人もがこの時期に旅行する。
中国からの渡航者対象に水際対策
「ゼロコロナ」政策の大幅緩和以降、病院や火葬場がひっ迫しているとの報告もある。
こうした中、中国は入国者に義務づけてきた新型ウイルス対策の隔離措置を今月8日に終了し、国境を再開すると発表した。
これを受けて十数カ国が中国からの入国者を対象とした渡航制限を導入している。
欧州連合(EU)の加盟27カ国は4日に「統合政治危機対応(IPCR)」の会合を開き、全ての加盟国に対し、中国からの渡航者に出発前48時間以内の陰性証明の提示を義務づけることを「強く」奨励するガイダンスを発表した。
その他の奨励内容は次の通り――。
- 中国発着便の全乗客によるフェイスマスク着用
- 中国からの航空機の無作為検査
- 空港での排水モニタリングを実施
こうした勧告は、EU政策執行機関の欧州委員会が、「圧倒的な」数の加盟国が中国からの入国者に対する制限措置を支持していると明らかにした翌日に示された。
フランス、スペイン、イタリアはすでに中国からの渡航者を対象にウイルス検査を義務化。EUを離脱したイギリスも、5日からイングランドで、中国からの渡航者に出発前の検査を義務づけている。
ただ、EUからの勧告を受けて、EU全体としての政策も導入されることになるかは不明だ。各加盟国は独自の政策を設定できる。
一方で、中国からの渡航者を対象とした制限措置についてEUの欧州疾病予防管理センター(ECDC)は先月29日、欧州はCOVID-19への免疫レベルが高く、中国で流行中の変異型もすでに欧州に存在しているため、このような措置は正当化されないとの見解を示している。
中国、「政治的な」規制と批判
中国政府は3日、一部の国が中国からの入国者に課している渡航制限について、政治的な動機によるものだと批判。報復措置を取る可能性があると警告した。
中国が新規感染者数のデータを最後に更新したのは昨年12月24日で、感染者数は5000人未満だったとしている。しかし一部のアナリストは、1日あたりの感染者数は200万人を超え、今月中に400万人に達する恐れがあると主張している。
WHOは中国に対し、これまでより即時性の高い情報共有を求めている。
3日には中国外務省の毛寧報道官が、中国政府は「世界とのコミュニケーションを改善する」意向だと述べていた。
しかし、毛報道官は4日、中国政府は「政治的目的のために(中国の)感染症予防・制御措置を操ろうとする試みに断固として反対し、相互主義に従って相応の措置を講じるだろう」と述べた。
中国政府が新型ウイルスをめぐり国際社会と対立するのは今回が初めてではない。WHOが、2019年の終わりに中国・武漢で最初に検出された新型ウイルスの起源調査を行おうとした際には、調査チームの入国を拒否するなど抵抗した。