東欧の3首相、ウクライナ首都で大統領と会談　リスク冒し鉄道で移動

東欧3カ国の首相が15日、ロシアによる攻撃が強まっているウクライナへの支持を表すため、同国の首都キーウ（キエフ）を訪れた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、3首相がポーランドから長い時間をかけ、危険を冒して列車で移動した勇気を称賛した。

キーウを訪れたのは、ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相、スロヴェニアのヤネス・ヤンシャ首相、チェコのペトル・フィアラ首相。

同市で外出禁止令が敷かれ始めた15日夜に到着し、ゼレンスキー大統領と会談した。同市のヴィタリー・クリチコ市長は、この日午後8時から17日午前7時までの外出を禁止した。

3首相のキーウ行きは、ポーランド側の発案だった。欧州連合（EU）が、安全保障リスクが生じる恐れについて警告したのを受けてのことだった。

チェコのフィアラ首相は会談後、「私たちはウクライナの勇敢な戦いを称賛する」とツイート。「ウクライナが私たちの生命のために戦っていることも知っている。あなたたちは1人ではない、私たちの国がそばにいる」とし、ウクライナは自由のために戦っているとした。

ポーランドのモラウィエツキ首相はツイッターで、ヨーロッパがウクライナを失えば、二度と元には戻らないと発言。欧州は「敗れ、辱められ、哀れな」姿をさらすことになるだろうとした。

ロシアが2月24日にウクライナ侵攻を開始してから、外国の首脳がウクライナを訪れゼレンスキー大統領と会談したのは、今回の3首相が初めて。

ゼレンスキー大統領は、「あたなたちの訪問は、ウクライナ支持の強力な表明となる」と、3首相に話したという。

ウクライナのデニス・シュミハリ首相は、ロシアにとって「壊滅的となる」制裁について協議したとツイート。ロシアを「テロ支援国家に認定」することも話し合ったとした。

3首相はここ数週間、ウクライナへの支持を明確に示している。スロヴェニアのヤンシャ首相は先週、ウクライナの将来的なEU加盟は認められるだろうと、EUとして強いメッセージを発信すべきだと述べた。

会談中にも爆発音

首脳らの会談中、キーウ市内各地で大きな爆発音が響いた。同市の西側境界付近では戦闘が起きた。ロシアの爆撃による市内の死者は15日、少なくとも5人に上った。

EUによると、3首相に決まった役割は託していない。今回の訪問は、先週フランス・ヴェルサイユであった非公式のEU首脳会議で話題となっており、EＵは事前に承知していたという。

ポーランドのマルチン・プシダチ外務次官は、移動は危険だが、「意義のために（リスクを）取る価値はある」と述べた。また、ロシア側に、キーウを訪問することを知らせていたとした。

BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長によると、3首相らは、ポーランド軍用機で渡航するとロシアに挑発行為ととられかねないため、列車での移動を決めた。いつポーランド・ワルシャワに戻るのかは明らかではない。

ゼレンスキー大統領はこれまで、北大西洋条約機構（NATO）に対し、ウクライナ上空を飛行禁止区域に設定するよう繰り返し求めている。NATOはこれを拒んでいる。

ゼレンスキー氏は、ウクライナ国民がNATO加盟は不可能だと理解するに至ったと発言。「私たちは何年間も、ドアは開いていると聞いていたが、加盟はできないとも聞かされていた。それが真実であり、認めなくてはならない。国民がこのことを理解し始め、自分たちと、私たち支援してくれるパートナー国家を頼りにするようになったことをうれしく思う」と話した。

3首相のキエフ訪問には、ポーランド与党「法と正義」のヤロスワフ・カチンスキ党首も同行した。ポーランド当局によると、カチンスキ氏の双子の弟の故レフ・カチンスキ元大統領は、2008年にロシアがジョージアに侵攻した際に、危険を冒してジョージアを訪れたという。

（英語記事　Three prime ministers risk train ride to meet Zelensky）