実在しないコロナ専門家の背後に中国ネットワーク=フェイスブック

Facebook logo displayed on a phone screen and keyboard are seen in this multiple exposure illustration photo taken in Poland on June 14, 2020.

画像提供, Getty Images

フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズは1日、実在しない新型コロナウイルスの専門家など、偽情報の拡散を目的とした500以上のアカウントを削除したと発表した。問題のアカウントの多くは中国を拠点にしていたという。

メタ社によると、削除対象になったアカウントは、「スイスの生物学者ウイルソン・エドワーズ」の主張を拡散していた。その主な内容は、新型コロナウイルスの起源探しをアメリカ政府が妨害しているというものだった。

同社の調査によると、主に中国から内容が更新されている500以上のアカウントがネットワークとなって、アメリカやイギリスの英語話者ユーザーのほか、台湾、香港、チベットの中国語話者ユーザーへ向けて、「エドワーズ」の主張を拡散していたものの、この偽情報キャンペーンは「おおむね不発に終わった」という。

今年7月に「スイスの生物学者ウイルソン・エドワーズ」を名乗るアカウントがフェイスブックとツイッターで、新型コロナウイルスの起源を調べている世界保健機関(WHO)の科学者たちにアメリカ政府が圧力をかけ、ウイルス発生の責任を中国になすりつけようとしていると主張した。

「エドワーズ」のこうした発言は、中国国営中央テレビの国際放送CGTN、上海日報、環球時報といった複数の中国国営メディアが、フェイスブックのアカウントを引用して繰り返し、大々的に報道していた。

しかし、スイスの在北京大使館は今年8月、そのような人物はおそらく存在しないと主張し、中国メディアにそのようなフェイクニュースは削除するよう要請していた。スイス大使館は、「エドワーズ」のアカウントは初投稿の2週間前に開設されたばかりで、つながっている友達が3人しかいないと指摘。さらに、「『ウイルソン・エドワーズ』という名前のスイス人の国民登録はなく、その名前の筆者による学術論文も存在しない」とも説明していた。

どういう中国企業が関係しているのか

メタ・プラットフォームズは11月の報告で、「『四川無声信息技術有限公司』という会社の従業員を含め、中国大陸にいる複数の人物や、世界各地に拠点を置く中国国会インフラ企業の関係者」が、この問題につながっていると述べた。

四川無声信息技術有限公司のウェブサイトによると、同社は中国公安部や、中国政府のサイバーセキュリティ―緊急対応を担当する「CNCERT」チームに、技術サポートを提供するネットワーク・情報セキュリティー会社だと自己紹介している。

メタ・プラットフォームズによると、実在しないスイスの生物学者に関する通報を検討した結果、フェイスブックの524アカウント、20ページ、4グループを削除。インスタグラムからは86アカウントを削除したという。

調査によると、「エドワーズ」のアカウントの最初の投稿を、他の偽のフェイスブック・アカウントがシェアした後、主に20カ国に点在する中国国営インフラ企業の実在する従業員たちのアカウントがこれをさらに拡散した。

メタの調査によると、この偽情報拡散には発信場所を分かりにくくするため、VPN(仮想プライベートネットワーク)の仕組みを使っていた。さらに、「エドワーズ」を人間らしく見せるため、人工知能の機械学習機能を使って生成したらしいプロフィール写真を使うなど、様々な工夫が施されていたという。

新型コロナウイルスは2019年12月に初めて中国政府からWHOへ報告されたが、その起源をめぐる調査は最初の報告から2年近くたつ今も、中国とアメリカをはじめ諸外国の間の争点となっている。

(英語記事 Facebook uncovers Chinese network behind fake expert)