ローマ教皇庁、同性愛嫌悪を処罰する法案は「信仰の自由を抑制」

Pope Francis

画像提供, Getty Images

画像説明, ローマ教皇フランシスコは、同性愛に対してリベラルな姿勢をとってきた

キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)が、現在イタリア議会で審議中のホモフォビア(同性愛嫌悪)を処罰する法案についてイタリアに抗議したことが22日、明らかになった。

イタリアのザン法案は、 LGBT(性的マイノリティー)や女性、障害者に対する差別や暴力を扇動する行為を処罰するもの。

ヴァチカンはこの法案について、1929年にヴァチカンとイタリア王国が締結したラテラノ条約で確保された信仰の自由を抑制するものだと主張している。

現在のカトリック教会の教義では、同性愛は「逸脱した行為」とされている。

法案支持派は、同法案には信仰の自由を確保する条項が含まれているとしている。

LGBT活動家で政治家のアレッサンドロ・ザン氏にちなんで名付けられたザン法案は、昨年11月にイタリア下院で可決された。成立するには上院を通過する必要がある。

同法案は女性やLGBT、障害者に法的保護を与えるもの。こうした保護対象者へのヘイトクライム(憎悪犯罪)や差別で有罪となった場合には、最高で4年の禁錮刑が科される可能性がある。

ヴァチカンの抗議内容

ヴァチカンは6月17日、イタリア大使に非公式に文書を送付し、ザン法案に抗議した。

ヴァチカン広報のマッテオ・ブルーニ氏はAFP通信に対し、この法案はイタリアとバチカンの関係史上「前例のない行為」だと述べた。

ヴァチカンは、同法案が1929年にイタリア王国と締結したラテラノ条約に違反すると考えている。この条約でイタリア王国はヴァチカン市国独立を承認した。

イタリア紙「Il Corriere」によると、カトリック教会は5月17日に実施される「ホモフォビアとトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)に反対する国民の日」について、カトリックの学校が対象外とされないことに異議を唱えている。

Alessandro Zan

画像提供, Reuters

画像説明, アレッサンドロ・ザン氏はザン法が宗教的検閲につながることはないと主張している

また、カトリック教徒がLGBTに関する意見を述べることで、法的措置を受ける可能性があると懸念を示しているという。

極右政党「北部同盟」のマッテオ・サルヴィーニ代表は、同党はカトリック教会の立場と同じだと表明した。

「表現や信仰の自由は制限しない」

ザン法案の発起人であるアレッサンドロ・ザン氏は、同法案が検閲につながるといった非難を一蹴した。

「(同法案の)内容は、何らかのかたちで表現の自由や信教の自由を制限するものではない。それに、すべての学校の自主性を尊重している」と、ザン氏はツイートした。

ローマ教皇フランシスコは2013年に教皇に選出されて以来、同性愛に対してよりリベラルな姿勢をとってきた。

昨年公開のドキュメンタリーでは、同性カップルにも婚姻関係に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」を認めるべきだと発言していた。

一方で、教皇はこれまで、同性愛は罪であるというカトリック教会の立場を繰り返し表明している。2018年には聖職者の間での同性愛は「深刻な問題」で「心配」だと述べた。

(英語記事 Vatican protests against Italian homophobia bill )