イラン当局、「米にブラックボックス渡さない」 ウクライナ機墜落

Red Crescent workers check the debris from the Ukraine International Airlines plane,

画像提供, AFP

イラン当局は9日、テヘランで墜落したウクライナ航空機から回収したブラックボックスをアメリカ政府やボーイングに渡す予定はないと発表した。

ウクライナ航空PS752便(ボーイング787-300型機)は8日午前6時12分(日本時間午前11時42分)、テヘランのイマーム・ホメイニ空港からウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かって出発した直後に墜落。乗客乗員176人全員が死亡した。

国際航空法では、イランが調査の主導権を握ることができる。しかし、通常は航空機メーカーが調査に携わるほか、専門家はブラックボックスの解析ができる国は限られていると指摘している。

この墜落は、アメリカとイランの緊張が高まる中で起きた。

アメリカ軍は3日、ドナルド・トランプ大統領の命令でイラク・バグダッドでイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を殺害。

7日にはイランがその報復として、イラク国内で米軍が駐留する少なくとも2カ所の空軍基地を弾道ミサイルで攻撃したばかりだった。

墜落と両国の対立を関連付ける証拠はない。

動画説明, イラン旅客機墜落、現場の様子

アメリカで生産されたボーイング機が関わる事故では通常、同国の国家運輸安全委員会が国際調査に携わるが、事故の起きた国の許可が必要なほか、その国の法律に従うことが求められる。

イラン民間航空局のアリ・アベドザデフ局長は声明で、「アメリカ人と航空機メーカーにはブラックボックスを渡さない」と明言。「この事故はイラン航空当局が調査するが、ウクライナ当局も参加する」と述べた。

一方、どの国がブラックボックスを調査するのかには言及しなかった。ブラックボックスには、コックピットの会話やフライトデータが記録されている。

ボーイングは「必要とされる支援を行う用意はできている」としている。

墜落の原因は?

在イラン・ウクライナ大使館は当初、エンジン不良が原因としていたが、その後この声明を撤回。委員会の調査以前に出た墜落原因に関するコメントは公式のものではないと説明した。

航空情報を提供する「フライトレーダー24」によると、墜落当時、テヘラン周辺の視界は良好だった。またウクライナ航空は、経験豊かな乗員が搭乗していたと話している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、正式な報告書が準備できるまでは「この惨事についての憶測や論拠のない説」に注意するよう呼びかけた。

イランのメディアは、技術的な問題が原因だと報道。また航空当局筋の話として、緊急事態は宣言されていないと伝えた。

アベドザデフ局長も、「テロリズム」は墜落とは関係がないと話している。

BBCのトム・バーリッジ運輸担当編集委員は、「フライトレーダー24」のデータでは墜落機は問題なく離陸し、順調に高度を上げて行ったが、高度2400メートル付近で突如、記録が途絶えたと説明。

また航空機事故の専門家によると、ボーイング787-300型機はエンジン不良でも高度を保つよう設計されているほか、こうした故障があった場合は飛行機の高度に変化が見られるはずだと指摘していると伝えた。

犠牲者には子どもも

ウクライナのヴァディム・プリスタイコ外相によると、犠牲者はイラン人82人、カナダ人63人、全乗員9人を含むウクライナ人11人、スウェーデン人10人、アフガニスタン人4人、ドイツ人とイギリス人が各3人。うち15人が子どもだったという。

しかしドイツ政府は、ドイツ人が犠牲者に含まれているという情報を得ていないとしている。

イランの救急当局は、犠牲者のうちイラン人は147人と伝えている。これはイランとの二重国籍を持つ外国人が65人いたためと考えられる。

カナダのジャスティン・トルドー首相は、墜落機に登場していた138人が、キーウ経由でカナダに到着する予定だったと明らかにした。その上で、調査に参加する用意があること、技術的支援ができることを表明している。

ウクライナ航空は、墜落機の乗客について情報提供のヘルプラインを解説した(+38-044-581-50-19)。

(英語記事 Iran won't give plane black boxes to Boeing or US)