【ロヒンギャ危機】「ミャンマー軍幹部を訴追すべき」 国連調査団が報告書を発表 

動画説明, ロヒンギャの難民少女たち 10代で妊娠結婚、人身売買、性的労働

国連は27日、イスラム系少数民族ロヒンギャに対するミャンマー西部ラカイン州でのジェノサイド(集団虐殺)とその他の地域での人道に対する罪をめぐり、ミャンマー軍幹部を訴追すべきだとする調査報告書を発表した。

数百件の取材を基にしたこの報告書は、ロヒンギャに対する暴力をめぐる国連の非難としては最も強いもので、ミャンマー軍の戦略は「実際の安全保障上の脅威とはあまりに不釣合い」なものだとしている。

ミャンマーはこの報告書を拒否している。

過去12カ月で少なくとも70万人のロヒンギャが暴力から逃れている。

報告書では6人のミャンマー軍幹部を名指しし、訴追を要求したほか、ノーベル平和賞受賞者でミャンマーの事実上の指導者のアウンサンスーチー国家顧問兼外相を軍の進攻を止められなかったとして強く批判している。

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報告書は、この件は国際刑事裁判所(ICC)で裁かれるべきだと訴えている。

ミャンマー政府は、軍事行動はロヒンギャの武装勢力や反乱の脅威に対するものだと繰り返し説明しているが、報告書では、記録された犯罪は「そこに付随する否定や常態化のレベル、無罪で済んでいるという点で衝撃的だ」としている。

「無差別殺人や女性への集団レイプ、子供への虐待、そして村全体を焼くことを、軍事的な必要性は正当化することは断じてない」

国連人権理事会が設置した国際調査団は、報告書作成に際してミャンマーには入らなかったものの、目撃者への取材や人工衛星による撮影画像、写真、動画といったリソースを元にしているとしている。

国連が疑っている犯罪

国連は2017年3月に国際調査団を設置し、ミャンマー、特にラカイン州で広く行われているとされる人権侵害の調査に乗り出した。

調査は、昨年8月にロヒンギャの武装勢力による攻撃をきっかけにミャンマー軍が起こした、同州での大規模な軍事行動の前に始まっている。

報告書では、状況は「何十年も尾を引く大惨事」だと指摘し、「徹頭徹尾、深刻で組織的かつ慣習化した弾圧」の結果だとした。

カチン州やシャン州、ラカイン州で記録された犯罪には殺人、監禁、拷問、強姦、性的搾取、迫害、奴隷化などが含まれ、報告書は「間違いなく国際法下で最も深刻な犯罪」だと断じている。

girl looking out from a makeshift shelter

画像提供, AFP/ Getty Images

画像説明, 何十万人ものロヒンギャが、バングラデシュにあるこのようなキャンプで避難生活を強いられている

また、ラカイン州ではロヒンギャに対する根絶や強制移住の痕跡が見つかり、「その特性や重大さ、範囲は、他の状況でジェノサイドを行う意図につながった事例に似ている」と報告した。

攻撃の責任者は? ミャンマー側の主張は?

国連調査団は、これらの責任を最も負う者としてミャンマー軍の幹部を名指しした。これにはミン・アウン・フライン最高司令官や副官らが含まれている。

Myanmar soldiers

画像提供, AFP

画像説明, ミャンマー軍は組織的な民族浄化を行ったと非難されている

報告書では、ミャンマー軍は事実上、法を超えた存在となっていると説明された。

ミャンマーの憲法では、文民政府は軍部に対してほとんど権限を持っていないが、報告書は「その活動や怠慢を通じ、政府はこの残虐な犯罪任務に加担していた」と断じた。

またアウンサンスーチー氏については、「ラカイン州での出来事を排除したり防いだりすることに、事実上の指導者という立場や倫理的な権限を使わなかった」と述べた。

Commander-in-chief Min Aung Hlaing with Aung San Suu Kyi

画像提供, Reuters

画像説明, ミャンマー軍のミン・アウン・フライン最高司令官(左)とアウンサンスーチー氏

一方、カチン州やシャン州の少数民族武装勢力や、ロヒンギャ武装勢力「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)も、いくつかの残虐行為を犯したと報告した。

さらに詳細な報告書は9月18日に公表される予定。

ミャンマーのハウ・ド・スアン国連大使はBBCビルマ語の取材に対し、「我々は初めからこの調査団というアイデアを受け入れていないため、その報告書も拒否する」と述べた。

「人権侵害は我々に対する一方的な非難で、我々に圧力をかけるため国際機関が仕組んだものだ。報告書は、バングラデシュに逃げた者や反体制派グループからの一方的な情報に基づいている」

ロヒンギャ危機とは?

ロヒンギャはミャンマーに住む数多くの少数民族の1つで、同国のムスリム(イスラム教徒)の大多数を占める。しかしミャンマー政府は、ロヒンギャをバングラデシュからの違法移民と見なし、市民権を与えていない。

ミャンマー軍は2017年8月、ASRAが警察施設を襲撃し、警官数人を殺害した事件を受けて制圧に乗り出した。

医療慈善団体の国境なき医師団によると、衝突が始まって最初の1カ月で少なくとも6700人のロヒンギャが殺害された。これには5歳以下の子どもが少なくとも730人含まれている。

ミャンマー軍は内部調査後の昨年11月、ロヒンギャ危機をめぐり、軍に責任はないとした。

アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、ロヒンギャ危機をめぐってミャンマーの軍幹部を人道に対する罪で訴追すべきだとかねてから訴え続けている。

(英語記事 Myanmar army 'must face genocide charges')