密売人は死刑に トランプ米大統領が薬物中毒対策を発表

US President Donald Trump speaks about combating the opioid crisis in Manchester, New Hampshire

画像提供, AFP

画像説明, ニューハンプシャー州でオピオイド危機への対策を説明するトランプ米大統領

ドナルド・トランプ米大統領は19日、薬物中毒の拡大を食い止めるための一連の計画を明らかにした。処方鎮痛剤やヘロインなどに含まれるオピオイド中毒が問題となるなか、麻薬密売に死刑を適用するなど厳しい措置を取る構え。ただ、政治や司法面での強い反発は免れないもようだ。

米国では薬物中毒患者が約240万人いると推定され、保健省によると、2016年には6万3600人が薬物中毒で命を落とした。

ニューハンプシャー州で行われた演説でトランプ大統領は「麻薬密売人に厳しい措置を取らないなんて時間の無駄だ」と発言。

「そしてこの措置には死刑が含まれる」

トランプ大統領は先にペンシルベニアで行った演説でも、麻薬密売人には「究極の」刑罰が必要だと示唆していた。

この計画の合法性は?

ホワイトハウスは計画について、司法省が「現行法で適正だと判断した場合」に麻薬密売人に対して死刑を求刑すると説明した。

現行法でも麻薬関連の殺人には死刑が適用されるが、これまで実刑に至った例はない。

一方、トランプ大統領は演説で、「法改正が必要で、今まさに取り掛かっている。司法省も必死に取り組んでいる」と述べた。

しかし、法改正には連邦議会が動く必要がある。また、連邦最高裁判所が定めた比例原則に抵触する可能性もある。

トランプ大統領の演説は、こうした問題に直面するとは認めているようだ。

同大統領は「究極の刑罰は死刑であるべきだ」「米国はまだこれに対する備えができていないかもしれないが、可能だ。可能なのだ」と話している。

他国の状況は?

トランプ氏はまた、「厳しい対応を取っている国では、薬物中毒問題などない」と強調した。

同大統領は先に、麻薬撲滅を推進しているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領を称賛したことがある。

この政策では警察に麻薬密売人を裁判なしで処刑することを認めており、警察は作戦中に4100人を殺したと発表している。

だが、人権保護団体は死亡者数はこの3倍に上ると主張。国際刑事裁判所も捜査を進めている。

シンガポールでは麻薬の密売に死刑が適用されており、これが薬物中毒患者の少なさに貢献しているという支持者もいる。

一方、同じく死刑が適用されるイランではオピオイド中毒がまん延しているという。

このほかのトランプ大統領の計画

トランプ大統領によると、米政府は医療制度を変え、オピオイド系鎮痛剤の処方を向こう3年で現在の3分の2に減らす計画。

医師や薬局の過失摘発を進めるとともに、関係した製薬会社にも法的措置を施すとしている。

また違法なオピオイドの流通を阻止するため、国際郵便の電子データを取得する必要があると述べた。

トランプ大統領は連邦議会に、この計画に対して2018~19年に60億ドル(約6400億円)の予算をつけるよう求める方針だ。

(英語記事 Trump urges death penalty for drug dealers)