オバマ米大統領、歴史的なキューバ訪問開始

雨のハバナに到着したオバマ一家(20日)

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画像説明, 雨のハバナに到着したオバマ一家(20日)

オバマ米大統領は20日午後4時半(日本時間21日午前5時半)、キューバの首都ハバナに到着した。現職米大統領のキューバ訪問は88年ぶり。1959年のキューバ革命以来続いた対立の歴史において、大きな転換点になると期待されている。

昨年夏にハバナに再び設置された米国大使館に到着したオバマ大統領は、「歴史的」な訪問だと述べた。大統領は後に、家族と歩いて旧市街も訪れた。

オバマ氏はラウル・カストロ国家評議会議長と会談し、通商や政治改革について協議する予定。キューバ政府主催の公式晩餐会も開かれる。一方で、革命の立役者、フィデル・カストロ前国家元首と会談は予定されていない。

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大統領専用機エアフォース・ワンで小雨降るハバナに到着したオバマ氏は、ミシェル夫人や娘たちを伴って笑顔でタラップを降り、ブルーノ・ロドリゲス外相に出迎えられた。

到着から2時間後に大統領は米大使館から「ここに来られたのは、素晴らしいことだ。1928年のクーリッジ大統領の訪問は軍艦で3日間もかかったが、私はわずか3時間で着いた。エアフォース・ワンがキューバに着陸したのは今回が初めてだし、これが1回目となるはずです」とあいさつした。

オバマ氏はさらに、今回の訪問は「過去よりも明るい未来への展望」を描き出す機会となると付け加えた。

オバマ一家はこの後、徒歩でハバナの旧市街を散策した。これは一般キューバ市民との交流の機会となるはずだったが、大雨の影響でそれはかなわず、傘を差して大聖堂を訪れた。

アメリカとキューバは昨年夏に互いの大使館をそれぞれ設置するなど、1961年の断交から54年ぶりに国交を回復させた。オバマ大統領の訪問は、歴史的な関係改善の大きな節目になると期待されている。

BBCのジョン・ソープル北米編集長は、わずか1年半前でさえ現職米大統領のキューバ訪問など論外と思われていたことを振り返れば、今回の公式訪問は極めて重要だと強調する。

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大統領到着のわずか数時間前には、政治犯の釈放を求める家族団体「白衣の婦人たち」や支援者がハバナでデモを行い、警察が数十人をその場から退去させた。

キューバ政府は難色を示しているが、米政府はオバマ氏は必ずキューバの反政府活動家たちと会談すると強調している。「白衣の婦人たち」とも会談するという。

さらに、54年前から続く米国の対キューバ経済制裁は解除されていないため、完全な国交正常化ではない。制裁解除には連邦議会の採決が必要だ。またキューバ政府は、米海軍によるグアンタナモ湾占領と基地の存続に抗議している。

オバマ氏とカストロ氏は2014年12月に、国交回復の努力開始で合意。以来、情報通信や定期旅客便運航、犯罪捜査協力や環境保護などについて政府間協力が進められてきた。

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ハバナで毎週恒例のルンバ・イベントを楽しむ人たち(19日)
画像説明, ハバナで毎週恒例のルンバ・イベントを楽しむ人たち。右の男性はオバマ氏支持のピンバッジをしている(19日)

<現場から>タラ・マケルビーBBC記者

オバマ大統領の到着前、滑走路では両国政府の担当者が警備をめぐり緊迫した協議を重ねていた。キューバ側のカメラマンたちが、どれだけ大統領に近づいて良いものかについて。

通訳を介して米政府側は、カメラマンの行動を厳しく制限しようとした。どれだけ友好的な状況下でも両国政府は対立しがちだと、目にも明らかだった。

オバマ氏が米国とキューバの政府関係者と言葉を交わす間、カメラマンがその様子を撮影していた。それから間もなく、別の米政府担当者がオバマ氏と家族に急ぎ近づき、カメラマンに下がるよう身振りで指示した。

大統領はしばらくして空港を離れた。その車列の中の2台が、米国とキューバの旗で彩られていた。

空港近くの道路脇にいた人たちは大統領車列を見送り、中には手を振る人たちもいた。

キューバのテレビはオバマ氏の到着を生中継した

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オバマ氏とフィデル・カストロ氏の会談は予定されていない

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画像説明, フィデル・カストロ氏とオバマ氏の会談は予定されていないが、前議長は19日にベネズエラのマドゥロ大統領と会談。地元各紙はこの写真を掲載した。

(英語記事 Barack Obama in Cuba at start of historic visit)