第6回「神聖な場所」への弁護士立ち会い、話が違う 元捜査1課長が語る
密室で行われる取り調べが虚偽の自白や冤罪(えんざい)を生んだ――。そんな反省から、取り調べに弁護士が立ち会える制度の導入を求める声が高まっている。長く捜査現場に身を置いた元警察官はどう受け止めるのか。元警視庁捜査1課長の久保正行氏(74)に聞いた。
――取り調べに弁護士の立ち会いを求める動きについて、どう考えますか
常に容疑者の隣に弁護士がいる立ち会い制度の導入には反対です。取調官と容疑者以外の第三者が取調室に入ることで、取り調べで最も重要な「事案の真相を解明する」機会が失われてしまうからです。
――取り調べを録音録画する「可視化」は、刑事訴訟法の改正で2019年に導入されました。これについてはどう考えていますか
もろ手を挙げて賛成はできませんが、時代の流れとしてやむを得なかったと思います。
取り調べの最中に警察官から暴言や暴力を受けた、と主張する容疑者や被告は少なくありません。可視化によって、適切な取り調べを行っていることが証明できるというメリットはあったと思います。
「賛成とは言わないけれど、特別反対でもない」と言う先輩の取調官もいました。黙秘や否認をしている真犯人に口を割らせるのは取調官の腕の見せどころですが、そのためにやるべきことは可視化の前と後で変わりません。
ただ、立ち会いとなると話は別です。
「恫喝や人格を否定する発言は刑事失格」と久保さんは言います。記事の後段では、実際に違法とされた取り調べの音声動画を紹介しています。
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