日本のマイナンバー制度に「構造的な問題」 専門家に聞く
マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」をめぐり、トラブルが相次いでいる。一方、デジタル先進国の一つとされるエストニアでは、IDカード取得は義務化されているが、保険証は廃止されていないという。現地の事情に詳しい一般社団法人「日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会」理事の牟田学さんに、その背景や日本の現状をどう見ているか尋ねた。
問題の多発は日本の構造的問題
――日本ではマイナ保険証のひもづけ誤りの問題が多発しています。なぜでしょうか
「日本のデジタル化の課題は、デジタル化の裏にある制度が複雑過ぎることにあります。マイナ保険証に関して言えば、いろんな保険制度が混在しています。公務員の共済組合、会社員の健康保険組合、業種ごとの国保組合のほか、自治体ごとの国民健康保険も、後期高齢者医療制度もあります。3千を超える保険者がそれぞれ個別にデータを管理しているため、正確な維持管理が難しく、制度の複雑さが相まってシステム化するのが非常に困難な状況です」
「そのうえで、それぞれの保険者ごとにマイナンバーをひもづけていますが、財政基盤が弱く十分な資金や人手をかけられないところもあるでしょう。健保組合では8割が赤字です。本来であれば、健康保険制度そのものを簡略化するなど、すっきりしたものにしないとデジタル化は難しいです」
――制度が複雑ゆえにデジタル化が困難になっているのですね
「重要なのはデジタル化の裏でどんな制度が動いているかということです。コンピューターはあいまいな命令が苦手です。エストニアの法律はすごくわかりやすく、シンプルなので、コンピューターが白黒つけやすい。というのも、デジタル化に対応できるように法律をすべてつくり直しました。おかげでコンピューターだけでなく、人間にも優しい書き方になっています」
「医療保険の仕組みもシンプルです。エストニアは保険者が一つです。以前は広域自治体や大都市ごとに17の保険機関がありましたが、業務の効率化と自治体の負担軽減を考えて整理統合しました。日本のように転職のたびにひもづけ作業があり、そのたびに間違いが起こる可能性はありません」
――日本の政府は、デジタル化のためにマイナンバーカードの普及が不可欠だと強調していますね
「マイナンバーカードを使っ…