カズワン最後の通信「浸水、冷たすぎて泳げない」 運輸安全委報告書
北海道・知床半島沖で4月、乗客・乗員26人が乗った観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、原因を調べていた国の運輸安全委員会は15日、報告書を公表した。乗客の携帯電話の位置情報などからカズワンの航路を解析し、知床岬の北端付近で折り返した後、波が高くなった復路で浸水が広がったと特定した。また、船首付近にあるハッチがふたの不具合で開き、相当量の海水が流入したと推定されると判断した。
カズワンは折り返し地点の知床岬から約14キロ南西にある「カシュニの滝」付近で沈没した。報告書によると、波の高さ(推定)は知床岬で1メートル以上だったが、その後高くなり、カシュニの滝付近では2メートル以上に達していた。船体はもともと波の穏やかな水域での航行を想定した構造で、「1メートルを超えると航行困難になる」(運輸安全委の担当者)という。担当者は「冷静な判断ができれば、戻れば戻るほど波が大きくなるとわかった。知床岬付近の避難港を使うべきだった」と話した。
また、沈没の原因については、ハッチのふたを閉じる留め具が摩耗し、「確実に閉鎖された状態ではなかった」と推定。船の揺れによってふたが開き、「相当量の海水が船首区画へ浸水したと推定される」と指摘した。さらに、外れたふたが当たって客室の窓ガラスが割れ、「窓から客室内に大量の浸水が生じたと考えられる」と結論づけた。
乗客と親族との携帯電話によるやりとりも明らかになった。「浸水して足まで浸っている。冷たすぎて泳ぐことはできない。飛び込むこともできない」と状況を伝える会話が、安全委が確認した最後の通信という。
カズワンが沈没するまでの経過とやりとり
(往路)
4月23日
午前10時ごろ ウトロ漁港を出航
午前11時ごろ 船長→カズスリー船長(無線)
「カムイワッカの滝付近で熊を目撃した」
(復路)
午前11時47分ごろ~午後0…