20年以上前の性被害、実父に賠償求めた訴え棄却 除斥期間を理由に

新屋絵理 松尾葉奈
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 子どもの頃に実父から性的虐待を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、広島市の40代の女性が、70代の父に約3700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、広島地裁であった。大浜寿美裁判長は、性的虐待によって症状が表れたと認めたが、不法行為から20年で損害賠償を求める権利が消える「除斥期間」が過ぎているとして請求を棄却した。女性は控訴する方針。

 判決によると、女性は保育園のころから、父のひざの上でアダルトビデオを見せられたり、下半身をなめられたりした。小学4年のクリスマスの日の夜に姦淫(かんいん)され、明確に拒否できるようになった中学2年のころまで姦淫行為は続き、性的虐待を受け続けた。女性は2020年に提訴し、翌年に医師からPTSDという診断を受けた。

 父側は訴訟で、時期や回数などは争うものの、性的行為をしたこと自体は認めた。ただ、最後の性的行為から20年がたち、除斥期間が過ぎているなどと主張。性的行為とPTSDなどの症状の因果関係も否定し、女性側の請求を棄却するよう求めていた。

 判決は、女性が性的虐待の意味を理解できるようになった中学生のころから男性への嫌悪感を抱き始め、10代後半ごろから虐待を思い出して苦しくなったり、怒りや恐怖の感情を抱いたりする症状が表れたと認定。性的虐待と症状には因果関係があり、父には損害賠償責任があると認めた。

 だが、不法行為から一定の時の経過によって法律関係を確定させるのが、除斥期間の趣旨だと指摘。性的虐待によって表れた症状で受けた精神的苦痛は「遅くとも女性が20歳になるころ」には生じていたとし、2020年の提訴より前に損害賠償の請求権は消えていたと結論づけた。

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この記事を書いた人
新屋絵理
国際報道部
専門・関心分野
フランス、国際情勢、裁判、人権