島崎周、布田一樹、編集委員・須藤龍也
「漫画村」の運営者とされる星野路実被告(29)に、懲役3年などの実刑判決が言い渡された。国会でも問題になった当時「国内最大」の海賊版サイト摘発事件。1年半以上に及んだ一連の公判からは、出版業界や作家たちに与えた損害の大きさと、海賊版サイト運営に手を出した若者たちの「安易な金もうけ」感覚とのギャップが浮かび上がる。
2日、星野被告は黒色のシャツとズボン姿で福岡地裁の法廷に現れた。「懲役3年、罰金1千万円、追徴金約6257万円」。法廷には約50分にわたり、判決を読み上げる裁判長の声が響く。著作権法違反罪と組織犯罪処罰法違反罪を認定し、「(漫画村運営で)最も重要な役割を果たした」と星野被告の責任を指摘。被告側の主張はすべて退けられた。
星野被告はその間、まっすぐ前を向いたまま、じっと言い渡しを聞いていた。
海賊版サイトが社会問題化する契機となった漫画村事件。そもそもどんなサイトだったのか。これまでの取材や公判記録から振り返ってみる。
漫画村は遅くとも2016年2月には開設されていた。「登録不要、完全無料」をうたい、人気漫画や雑誌、写真集などの画像データなどを誰でも読め、ダウンロードもできた。
スマートフォンでの見やすさもあり、口コミでアクセスが増えていった。17年半ばには、国内最大の海賊版サイトとして存在が知られるようになる。
出版各社は捜査機関に告訴。18年には国会でも問題になり、政府は同年2月、漫画村など3サイトを名指しして、インターネット接続事業者(プロバイダー)に接続遮断を実質的に要請した。
漫画村は同年4月にアクセスできなくなり、そのまま閉鎖された。
朝日新聞が18年、ネット専門家の協力を得て独自に調査したところ、漫画村が使っていたURLの所有者情報の検索で、インド洋の島国セーシェル共和国を所在地とするウェブ制作会社の記載があった。
関連情報をたどると、動画やネット掲示板の情報をまとめた複数のサイトを運営していた形跡が判明。運営者として、都内の会社代表を務める20代の日本人男性が記載されていた。
それが星野被告だった。
事態が動いたのは19年7月。星野被告が滞在先のフィリピンで拘束され、共犯の男女3人も著作権法違反容疑で福岡県警に次々と逮捕されたのだ。
無職の男(39)、アルバイトの男(28)、イベントコンパニオンの女(26)=肩書は当時。19年9月から始まったそれぞれの公判から、実態が明らかになった。
無職の男は、星野被告が経営していたメイドバーの店長を務めており、星野被告から依頼されて17年3月ごろから漫画村に関わった。アルバイトの男はその知人。コンパニオンの女は、アルバイトの男の交際相手だった。
基本的な手口は、ほかのサイトなどから漫画のデータを入手してアップロードしたり、第三者のサーバーにつないでそこに保存された画像を閲覧できるようにしたり、といったものだ。
作業の連絡は主にLINEで行われていた。グループ名は「村住民の掟(おきて)」。
「ヤングジャンプとチャンピオンの更新終わりました!」
「(漫画の作品名)だけ先に更新しました」
彼らに具体的な指示を出していたのが星野被告だ。
「今アクセス伸びてるから毎日やって欲しい」
「今日の人気漫画を参考に単行本無いやつ結構あるから単行本アップ行って欲しい」
一時は数万点以上の作品が掲載された。サイトへのアクセス数は、最大月約1億回にのぼった。
星野被告はどんな人物なのか。
取材や公判記録によると、星野…