「正しく恐れる」のは難しい 個々人の合理とリスク判断

有料記事コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線

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あすを探る 内田麻理香・東京大特任講師

 東日本大震災から十年、新型コロナウイルスの感染が国内で確認されてから一年経つ。この間、「正しく恐れる」という言葉を、数多く目にした。

 これは物理学者かつ文筆家である、寺田寅彦の随筆から引用された句だ。寺田は、「小爆発二件」の随筆で「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」と書いた。この全文を読めば、寺田ほどの科学的知識、科学的思考力を持つ者でも、正当にこわがることは難しいという述懐であると解釈できる。

 しかし、いま使われる「正しく恐れる」という言葉は、自分と感覚が異なり「こわがりすぎる」と思われる者に向けて、「あなたのリスク認知は歪(ゆが)んでいる」という、非難の意味合いをもって使われているように見える。

飛び交う「放射脳」「コロナ脳」

 東日本大震災に続く福島第一…

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