マスク苦手な欧米、心理学に答えあり 日本人との違いは
コロナQ&A(海外編) 回答:田中章浩・東京女子大教授
新型コロナウイルスをめぐる諸外国の動きは様々です。記者が日々の取材をするなかで気になったテーマを、識者に尋ねました。
Q 新型コロナウイルスの流行で、世界中の人がマスクをするようになりました。でもそれ以前、欧米では街中でマスクをする習慣はあまりなかったようです。日本との違いに何か理由は考えられますか。
A 心理学の観点から考えると、「コミュニケーションで顔のどのパーツをより重視するか」というのがポイントになっています。
メールなどで使われる顔文字を見て、米国人と日本人が顔のどのパーツから感情を読み取っているかを比較した研究があります。日本人は目元で、米国人は口元で感情を読み取る傾向があることが実験でわかりました。別の研究で、ヨーロッパの人々も口元を重視することがわかっています。
顔の中で一番顕著に感情が表れるのは口元で、一番感情を偽りにくいのが目元だと言われています。口元は1~2センチは動き、大きく変化しますが、目元は数ミリしか動きません。他方で、口元の筋肉は意思で動かせるため感情を偽れますが、目元を意思で動かすのは難しいです。
つまり、感情を表に出す文化の欧米人にとっては、気持ちを読み取るのに口元がわかりやすい。一方、感情をあまり表に出さない文化の日本人にとっては、意思で動かしにくい目元を見る方が、相手の真意を読み取りやすいのです。
日本人は口元が隠されてもそれほど気になりませんが、欧米人には、相手の感情を読み取るのに重要な口元が隠されたマスク姿は、不気味にうつり、なじめないのでしょう。日本人が、目元が隠されたサングラス姿を見て「ちょっと怖い」という印象を抱くのと似た感覚だと思います。
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田中章浩(たなか・あきひろ) 東京女子大現代教養学部教授。専門は心理学。コミュニケーションを支える認知基盤について幅広く研究。
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