103万円の壁について国会論戦が本格化する中、自民党は消費者物価の上昇率とパートの賃金上昇率が1.2倍になったことを根拠に、折衷案の「120万円までの引き上げ」を主張。国民民主党が譲れない「178万円」とは50万円以上の開きがある。
堂々巡りの攻防に、荻原氏はこう続ける。
「物価高で家計は悲鳴を上げて、消費は冷え込み、庶民の生活は土壇場まで追い込まれています。国民民主党が10月の衆院選で議席を伸ばしたのは、有権者の悲痛の訴えであり、178万円への引き上げは最低ラインですよ。玉木氏はガソリン税を軽減する『トリガー条項の凍結解除』をめぐって、過去に2度も自民党に煮え湯を飲まされています。自民党は譲歩を引き出そうと駆け引きしていますが、今度こそ踏ん張って、178万円への引き上げを実現できなければ、有権者を裏切ることになります」
ここが踏ん張りどころの玉木氏だが、12月4日に不倫スキャンダルのけじめを取り、「役職停止3カ月」の処分が決定。今後の影響は避けられない事態になった。
壁の引き上げをめぐり、財源の確保が争点になっているが、荻原氏は呆れた口調でこう話す。
「新型コロナで苦しんだ時期があっても、国の税収は4年連続で過去最高を更新。23年度は72兆円余りで、5年前より年間約14兆円も増えています。どれだけ国民の懐から取っているのか。そして見過ごせないのが基金バブル。政府主導で国の府省庁が設置する基金事業が約200もあり、お金を貯め込んでいった結果、その残高は23年度末には18.8兆円になり、こちらも過去最高を更新して肥大化。本当に必要な基金なら問題ありませんが、国の〝第二の財布〟と呼ばれ、国会の監視が厳しくなく、何に使われているのか、運用実態が不透明なんです。財源がないと言うなら、無駄な基金事業を廃止して不足分に充てればいい話です」
庶民の手取りを増やすという目標を掲げて、「玉木VS財務省」の潰し合いが勃発する中、青山議員は自民党の最大の問題点として、財務省の支配を受けていることだと指摘する。
「来年で結党70年という長い歴史の中で、自民党が野党に下ったのは、93年からの細川政権と09年からの民主党政権を合わせて4年だけ。これを除く約65年間、与党の自民党議員は橋や道路作りといった地元の要望を聞き、それを実現させることで票を得てきた。そういう仕組みが、全国津々浦々に定着しているわけです。財源を握る財務省がウンと首を縦に振らなければ地方に予算がつかないし、議員は信用を失って選挙で負けることも考えられます。だから自民党議員は財務省の顔色を気にしている。これは単に財務省を悪者にして済む話ではなく、社会構造の問題。国権の最高機関は国会なのですから、政府のあり方や地方交付税制度を正していくしかないと考えています」
年収の壁をめぐる暗闘はしばらく続きそうだ。