電力と震災東北「復興」電力物語 | 町田徹 |本 | 通販

危機において企業の生死を分かつものは、長い間育まれた企業の文化である。
危機時の緊急マニュアルの精緻さではない。
震災から三年、気鋭のジャーナリストが取り組んだテーマは、同じ大震災に
直撃されながら、東京電力と東北電力はなぜ明暗を分けたのか、である。

人類史上最悪の事故を起こした東京電力の福島第一原子力発電所と同じ太平洋
岸にあり、より震源に近く、大きな揺れと高い津波に襲われながら、3基そろって
「冷温停止」を果たしたのが、東北電力の女川原子力発電所(宮城県)である。
そればかりか、津波で集落が崩壊した地元民数百人を敷地内に受け入れた。

著者は東北電力の取材を進めた結果、戦後の電力業界再編によって生まれた
東北電力の初代会長・白洲次郎と、初代社長・内ヶ崎贇五郎という「創業者」
2人の思想に辿りつく。
吉田茂の懐刀としてGHQやマッカーサーとの折衝に当たった白洲次郎は、
只見川の電源開発で抜群の政治力を発揮する一方で、ヘリコプターや無線機の
導入に尽力した。
そのDNAは、原発の安全対策に他の電力会社から「コストがかかりすぎ」と
揶揄されるほど手厚く手当てをしていた「孤高さ」「独自の哲学」としていまなお
企業文化に刻み込まれている。

内ヶ崎は宮城県黒川郡冨谷村(現富谷町)の出身で、戦前の国策会社である
日本発送電(日発)東北支店長、東北配電副社長、社長を歴任した電力のプロ。
内ヶ崎は合併会社である東北電力の社内の「和」を重視した企業文化確立に尽力した。
「地味で愚直」な安全対策にそのDNAが残されている。

この2人のほかにも、只見川開発を指揮した平井弥之助は副社長を退任したあと、
電力中央研究所理事兼技術研究所長時代に、東北電力の社内委員会メンバーとして
女川原発の敷地を海抜15メートルとする案を推進した。その正しさは2011年3月11日に
津波に耐えたことで実証された。

東京電力の福島第一原子力発電所の事故以降、電力会社への批判・疑念は厳しい。
原発再稼働への反対の意見も多い。では、電力会社はすべて悪なのだろうか。
「いや、違う」というのが著者の結論である。

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本の長さ

304ページ
言語

日本語
出版社

日経BP
発売日

2014/2/20
寸法

13.6 x 2.6 x 19.5 cm
ISBN-10

4822249999
ISBN-13

978-4822249991

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登録情報

出版社 ‏ : ‎ 日経BP (2014/2/20)
発売日 ‏ : ‎ 2014/2/20
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 304ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4822249999
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4822249991
寸法 ‏ : ‎ 13.6 x 2.6 x 19.5 cm

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町田徹

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hitomi
感動する
2024年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入

東北電力の成り立ちや特殊性がよく伝わってきて、いい会社だなぁと感動してしまいました。

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役に立った

レポート
martsu
いつも満足
2023年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
絶版等で新品購入出来ないときは、いつもネットオフさんで購入しています。状態も説明通り以上の綺麗な書籍で、安心して注文出来ます。今後も宜しく御願いします。

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martsu

いつも満足

2023年1月5日に日本でレビュー済み
絶版等で新品購入出来ないときは、いつもネットオフさんで購入しています。状態も説明通り以上の綺麗な書籍で、安心して注文出来ます。今後も宜しく御願いします。

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レポート
ぬらりひょん
東北電の資料本として価値はあるが、著者の意図しない意味で同社の問題点を浮き彫りにしている書
2014年3月23日に日本でレビュー済み
現代ビジネスのウェブサイトで連載していた町田徹氏の著作です。

【評価できる点】
取材結果を限られた紙数で綿密に再現し、分かりやすく読者に提示する所はとても評価しています。門田隆将氏程は偏っていないとも思います。

女川原発のみならず、震災に際しての同社全体の復旧に向けた動きを扱っており、後方兵站部門まで実名入りで描写するなど、類書には無い特徴を持っています（例えば食料の確保など）。個人的には第1章、第3章などで扱われる火力発電設備の復旧が興味深い。原発ばかり注目される中、それ以外の電力設備の状況を書き込んだ一般書は中々無いですし同系統の『大停電を回避せよ』に比べても具体的な記述が豊富で優れていると思います。

また、著者は真面目な人物と推測され、取材対象から聞き出した失敗談を積極的に盛り込み、同業他社に対しては比較的厳しく批判も加えています。エピローグの泉田氏とのやり取りなど興味深い舞台裏もあります。

しかし、原発というシステムの是非を考察することと、一般的な現場社員を難詰或いは賞賛することは別問題です。復旧のために努力する場面は各社にあり、P181-182には東電配電部門の矜持が描かれています。それ故に、殊更東北電の違いを強調する著者の姿勢に若干疑問が沸くのです。表現は現代ビジネスよりは抑制されてる気もしますが。

具体的な点について列挙すると、本書は下記の点で問題を感じます。

【１】1章で原町火力の被災を克明に描いてますが、同所のある浜通りは従来主流だった学説で津波常襲地帯とは見なされず、且つ、福島原発と環境が相似しています。克明に描くほど、津波に対して無防備だったことが良く分かります。同社は浪江町にも原発計画を持ってましたが、建設していたら同じベース電源である原町火力のように津波に飲まれていたでしょう。『歴史としての東日本大震災口碑伝承をおろそかにするなかれ』（刀水書房）によると浜通りでも津波の言い伝えはあったそうですので、プロローグで強調している同社のDNAには疑問符が付きます。

なおP29には「非常対策本部が置かれる部屋は地震で変わり果てた姿になっていた。大型キャビネットが全て倒れ、足の踏み場もない」とあります。オフィス用キャビネットの固定など、防災強化を謳う事業所では常識の範疇。私の勤め先でも手を付けており、書類棚は扉付のものに入替して金具で固定してましたので無傷でした。重要施設においてこんな、数万円〜数百万円レベルの工事を放置した東北電力の感覚に何故著者は疑問を感じないのでしょうか。P46に女川の中操でも天井板が降ってきたと書かれてますが、同レベルのミスですね。

【２】女川原発の記述においても同様の齟齬が目立ちます。例えば社宅の件。確かに犠牲者を出したことは悼ましいことです。しかし、津波常襲地帯であることは分かっていたのですから、社宅も場所を考慮し避難ビルとして使えるものでなければなりません。本書には海抜も載ってないので検証のしようがありませんが、福島第一で89年夏の水害で「社宅」が流されたことがあり、チョークポイントとして意識は必要でした。

P44から始まる「強固だった事務本館と通信網」も同じで、「道路も寸断された」ことが問題です。福島第一や第二は平地に立っているため寸断リスクは小さいのですが、山あいな地形の原発では接近経路の多重化や必要な補強を事前に行っておく必要があり、女川で顕在化した弱点です。実際、P92には東北電の応援電源車が福島第一敷地内までは入り込めたのに対し、P169-170には女川の交代運転要員が出勤出来ず所内に偶々居た別の運転班と交代するまで29時間も缶詰だったと書かれています。発災直後のワークロードに悪影響を与えており問題です。

そして再三強調される津波対策ですが「従来から」津波常襲地帯であることが当然視されていた地域であり、地元出身者で固めれば備えが強固になるのはある程度は自明です。むしろ、建設時に設けた余裕を食い潰し、後一歩で敷地高を超えるところまで来ていたように見えます。「敷地高以上の津波対策」として防水扉などを設置し始めたのは震災後の事です。この時系列は要注意でしょう。

【３】本書では触れてませんが東北電力は昭和40年代、平井寛一郎社長直々の方針で建設中の東電福島原発に技術者を派遣し、それが同型のBWR採用に結びついています。細かい話は省きますが同じ原子力村相手なので設計思想や諸元などの入手も容易だったでしょう。しかし震災前に東電の防災対策に東北電力が注文を付けたという話は聞きません。他社の原発とは言え自社管内。プロローグで言及したDNAの性質上当然為すべきことなのに、それをしない。P262にある「マイナスの社風」が要因とも思われますが、2000年代になっても過去の遺恨を引きずったとするのも不自然な話です。【１】の件からすると技術的な注文を付ける必要を感じなかったのでしょう。「浜通りに大津波など来ない」ということです。

【４】第4章P247以降で耐震補強を取り上げていますが、これを行ったのは2006年に国の耐震設計指針が改定され、既存原発もバックフィットを求められたからでは。遅らせた東電が異常なのであって、東北電は「普通の対応」「言われたこと」をしたに過ぎません。むしろ同社から背景の説明は受けてないのか気になります。マージンの取り方は浜岡に劣り、改訂された基準地震動を部分的に上回ったことから、同社を特別視する根拠は薄弱と分かります。

P248において中操の手すりを「他の原発では見たことない」と書いていますが『死の淵を見た男』P26には手すりにつかまって耐えた旨記載がありますので東電との有意差はありません。

【５】「BWRとPWR」なる節の説明も問題です。炉型が異なれば過酷事故に際してのポイントも違います。ジルコニウム反応由来の水素濃度上昇に脆弱なのはBWRであり、最悪ケースでベントの必要性が早期に求められるのもBWRです。「乱暴な議論」ではありません。NUREG-1150等炉型別に評価した事例は枚挙にいとまが無い。BWRは建屋をコンパクト化出来る事など経済面での利点を除くと、現在では総じてPWRに劣るのは否めず、東北電力が何故BWRを採用したのか、その技術判断はジャーナリストなら徹底的に解明しなければならない問題です。細かいことですが、P233の志賀臨界事故も制御棒を下から挿入する欠点に遠因がありますね。

上記の他にもありますが、著者の筆力が多くのウィークポイントを浮かび上がらせ、簡単に再稼働出来なくなったのは至極当然のことだと自ら証明する形になったのは皮肉です。世代も環境も大きく変わっており、個人の人格が社風として十分残っていたとは思いません。

なお著者が供給量を重視して一押し？の東通ですが、P291の通り活断層問題が露見しており、2011年春にはDGの運用でミソをつけました。ですが本書では東通の弱点への言及・掘り下げが不足しています。巻末参考文献が同社の社内報、技報、社史、業界誌記者の著書ばかりであることや、取材対象を電力関係者に集中したことと無縁ではないでしょう。ああいうものは確かに内情を詳しく書かれていますが、それだけでは批判力は身に付きません。お決まりの「真実の物語」「マスコミは報じない」的なフレーズもてんこ盛りで「報じないって・・・貴方は報じる側でしょ」と言いたくなる矛盾話法です。

散々批判しましたが、冒頭でも書いた通り取材を重ねる姿勢には敬意を表します。ここに書いた以外にも興味深い逸話が満載です。福島第一以外の原発についてもこういった取材自体が必要なのは一面の事実です。一方で、読み手にもリテラシーが必要ですし、女川絡みの議論をするなら他の論者もこうした努力はするべきでしょう。原発へのスタンスに関わらず、著者より粗い論を展開する人が賛否両派にいるのも事実です。故に星は3つとします。

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37人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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レポート
ネコノミスト
取材に基づきながも情熱溢れる
2015年12月19日に日本でレビュー済み
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町田徹という人は別に電力の回し者というわけではなく、ジャーナリストとして現場取材を行い、そこで確認した事実や感じた感情をまとめている。電力会社が創業以来、地域のために頑張ってきた様子がよく分かるが、東電・関電に対しては手厳しいことが書いてある。電力会社が自社の宣伝を自粛する一方で、新聞やメディアは一方的なことしか書かないので、多様な見方に触れるのにも役立つと思う。

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レポート
sakado
裏読みすると面白い本
2014年3月31日に日本でレビュー済み
著者がジャーナリストの使命感から本書を書こうと思ったらしい点は評価できる。ただ、東北電力の礼賛には必ずしも賛成できない。また、悪いのは東電であり、東北電のように良い電力会社もあるという論理により、間接的に地域独占体制を擁護することになってはいないだろうか。そもそも今回の原発事故の原因は電力会社間の相違にあったというよりは、根本的には地域独占体制にあったのではないだろうか。その地域の分け方（9電力）は、昔、水力の関係で決まったらしく、水力発電の比重が大きく低下した今ではほとんど意味を成さなくなっている。東北ではない新潟県（今は広域東京圏だが、歴史的には関西との関係が深い）が東北電力の管轄になっており、しかも東北電力はこれまで執拗に新潟県を東北に引き入れようと画策してきたため、あまり良い印象は持たれていない。強引な企業というイメージだ。そこには著者の描いているような「弱者としての東北」はない。著者は東北電力が只見川開発に注力した様子を描いているが、東北は広く、山地も多いのに、東北電力はなぜ群馬県や新潟県に近い場所にこだわったのだろうか。本当に東北のことを思っているのなら、東北の中でも北部の開発を優先すべきではなかったのか。今は大震災に見舞われて余裕が無くなったため、あわてて地元回帰（東北回帰）になっているようにも見える。いずれにせよ、今後は東京電力とか東北電力とかいう地域的枠組みの持つ意味は低下していくだろう。皮肉にも福島の原発事故が頓挫していた電力自由化に弾みをつけることになった。発電と小売りは自由化されて多くの企業が参入し、送配電はスケールメリットを生かすべく50ヘルツ地域と60ヘルツ地域の東西2社体制になっていく公算が高い。東電VS東北電という矮小化された構図でなく、そういう大きな流れの中で、しかも過去ではなく、今後を見据えた議論を期待したい。

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レポート
きき
東北電力への応援歌　がんばれ
2014年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
電力会社といっても、それぞれ成り立ちが違い、特に、雪深い東北に電気を送り続ける東北電力は「おしん」のような耐え忍ぶ電力会社だと感じた。
被災者を出した隣の電力会社ではなく、東北電力は被災者を受け入れた電力会社。
震災では家族や親戚が犠牲になってしまった社員も多いと聞く。
まだまだ復興への道のりは険しいけれど、復興へ向けて東北を牽引し、縁の下の力持ちのような会社であって欲しい。

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29人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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レポート
成田　俊夫
配送が信用できない。トレーサビリティが確立していない。
2014年3月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
配送が信用できない。トレーサビリティが確立していない。改善を強く要望する。

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レポート
kanarazufukkou
東北復興への想いーインフラを支える会社のこころ
2014年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
　被災した電力会社は，ほかのガス，水道，鉄道，道路などと同じインフラストラクチャーとして，みなさんの生活を支えるために仕事をしています。特に電気は，今の社会では不可欠なものになっていますので，停電は何としても解消しなければならないものという意識は極度に高いと思うところです。昨日も気仙沼で大雪のために仮設住宅も含め停電していましたが，今朝2時に復旧したというニュースを聞いて，寝ずに作業をしている人がいるということに，感謝しきれません。
　内容は，被災した電力会社がどのような動きで早期の復旧を果たせたか，ということなので，読んでいただければと思うところです。
　一つ思っていただきたいとすれば，この本では東北が創業の経緯から地域のため，という内容になっていますが，どの電力会社も，同じような気持ちで電気を送ることを第一に考えている，ということでしょうか。福島で事故を起こした会社の社員も，この部分はあまり変わらないのだと思うのです。

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電力と震災東北「復興」電力物語単行本 – 2014/2/20

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