「Always Like This」で、彼らの事を知って、その後のデビューアルバムも聴いてはいた。
その時の印象としては、誰かを真似ずに自分達のサウンドを鳴らそうとしているのが伝わってくるけど
アイデア(構成含む)や、メロディーの練り込みが少々甘いかなーという風に感じた。
なので、個人的には愛聴盤とはならなかった記憶があるが、何曲かは気にいったし
受けた影響を、自分たち流のサウンドに組み立て直して鳴らそうとしている所に好感を持った。
そして、全編アコースティック作である2ndを挟んでの本作。
2ndは未聴だが、本作は1stと比べたら格段にソングライティングも、アイデアも良く練られている。
先にも書いた通り、自分たちが受けてきた音楽の影響をうまく組み立て直す事により
自分たちの頭の中にある理想のサウンドを鳴らそうとしていて、実際、それは成功しているように感じた。
大まかにアルバムのサウンドを説明すると
アンビエントな透明感のある、エモーショナルで美しいギター・ミュージックとなるだろうか。
自分たちのサウンドを追求している素晴らしいアーティストの音楽が一言でジャンル分け出来ないように
今作も簡単には説明出来ないような複雑さと豊かさに満ちている為、細やかなサウンドのニュアンスを
伝えるのが難しい。
なので、少しでも参考になればと思い、気になった曲を数曲程書き出してみる。
まずは冒頭の「how can you swallow so much sleep」について。
透明感のある美しいアルペジオとコーラスで始まり、印象的なボーカル・メロディーが
何度も何度もミニマルに繰り返されながら、抑えられたエモーションが
どんどん熱を帯び始めていく構成は、スリリングで、本当にお見事。
ブレイクビーツと、せわしなく刻まれるベースラインもダンサブルで素晴らしい。
3曲目の「your eyes」は、スカのような裏拍に入る4つ打ち気味のキックが
曲に対して楽しい違和感と、エネルギーを与えており
そこに乗る不思議なボーカル・メロディーと、ユニゾンするギターフレーズが、
いつの間にか頭から離れなくなっている、中毒性の高い曲。
続く、4曲目の「lights out words gone」では、シンセ・クワイアが美しい陶酔感を生んでいる上で
80年代エレ・ファンク風の、ファンキーな単音のギターリフがミニマルに刻まれ
途中、最初のリフにハモるように、キーの違うリフが同じリズムで被さってくると
そのアイデアが効果的に響き、曲の持つエモーションに鮮やかな変化をもたらす。
陶酔を誘うような女性コーラスも美しいし、途中のパートで聴ける木琴か鉄琴のような音(ギター?)も
このアルバムに置けるサウンドメイキングの細やかさに
目を向けさせるには充分な役割りを果たしていると思う。
もし、今作を買うのを迷っている方がいるならYOUTUBEなどで、先行シングルにもなった「shuffle」を
聴いてはみてはいかがだろうか。
ウキウキと跳ねるピアノのループとベースで始まるこの曲にも、透明感のある美しいアンビエンスと
心踊るブレイクビーツがあり、裏拍にクワイヤのようなサンプリング音や、ブラスサウンドが入ってくると
曲がエモーショナルに変化し、ダンサブルなのに胸を締め付けられるような感覚に捉らわれる。
試聴してみて気に入ったのなら、恐らくこのアルバムを買って損をするという事は無いはず。
他にも、マイ・ブラッディー・バレンタインかジーザス&メリーチェインを思わせる
甘いノイズが煌めく8ビート・チューンもあれば、
ゆっくりと静かに夜が明けて、刺すような冷たい朝の空気に包まれていくような
美しいサイケデリック・ロックもある。
アルバムの最後、レディオヘッドを思わせるシンプルなピアノと歌による
憂鬱なフィナーレを迎える頃には
このバンドに夢中になっている自分に気付く方も少なくないはずだ。
演奏についても少しだけ。
全てのパートには良く練りこまれたアイデアがあり、サウンドメイキングや構成に至ってもそれは同じ。
サンプラーやループといったエレクトロニックな要素も使われてはいるが、あくまで前面には出てこずに
隠し味として、効果的に使われている所も素晴らしいと思う。
今作に捨て曲は無いし、アルバムを通じて共通する美しい空気感もある。
演奏されるリズムは、よりメロディーを効果的にしているし、メロディーもリズムを効果的に生かしており、全ての演奏がお互いに有機的に関与して曲の持つ力を最大限に引き出している。
本当に全曲素晴らしいので、全ての曲について細かく書きたい事があるけれど
このままじゃ埒があかないので、そろそろレヴューを終わりたいと思う。