終戦から1970年まで(製作が1968年であるにもかかわらず)の世相を反映した、「日本一の〜」シリーズとしては異色の作品となっている。渡辺篤がヤクザの組長として軽妙な老人をセンスのいいドタバタで演じているのが光る。どこまでが演出でそこまでがアドリブなのか興味深い。その他、古今亭志ん朝やドリフターズ、なべおさみ、小松政夫、熊倉一雄、常田富士男、小沢昭一、名古屋章など、放送界で活躍する人物が出てくるのは楽しい。
のだが、ストーリー自体は散漫で、それまでの「日本一の〜」シリーズで見せた植木等のC調だが超人的に努力し信じられないことをやってのける、それでいて身分にこだわりのない、実社会では存在し得ない浮世離れしたキャラクターが生きていない感じがする。結局は「特攻隊の生き残り」というアプレ原理主義的な浮遊感にしか見えないというストーリー上の欠陥がつきまとい、C調な感じとは違った投げやり感にしか見えない。最後、政界に関わるところも蛇足感が否めない。時代が「政治の季節」だったことが影響したのは明らかだが、日本の高度経済成長に陰りが見え始めていたために、C調路線も変わらざるを得なかったのかもしれない。
それまでのシリーズのような、無鉄砲な主人公がC調を武器に出世して目当ての女性と添い遂げる、という明快なコンセプトを期待して観ると、ストーリーをこねくり回した結果、無個性になってしまった植木等にガッカリするかもしれない。というか、やっぱり「等」はサラリーマンとして、ハッタリであったとしても、業績を上げないと面白くないキャラクターなのではないかと思う。