【12月21日 AFP】イスラエルの左派系有力紙ハーレツは、パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘に参加している匿名の兵士らの証言として、同地区を南北に分ける「ネツァリム回廊」でパレスチナ民間人に対する「無差別殺りく」が行われていると報じた。イスラエル軍は20日、この報道を断固として否定した。

イスラエルの右派政権に厳しく批判されている同紙は、兵士や将校、予備役の話として、師団長らがガザで作戦を実施する前例のない権限を与えられたとしている。

指揮官らは、ネツァリム回廊で武器を持たない女性や子ども、男性を殺害するように命じたとされる。ネツァリム回廊は、イスラエルと地中海を結ぶ幅7キロの回廊で、軍事作戦区域となっている。

ハーレツは、指揮官は武装勢力200人を殺害したと発表したが、実際に「ハマス工作員と確認できたのは10人しかいなかった」事例を振り返る将校の話を報道。

兵士らは同紙に対し、ネツァリム回廊への「侵入者には誰彼構わず」発砲せよとの命令を受けたと証言している。

ある兵士によれば、大隊長が「境界線を越える者は全員テロリストだ。例外はない。民間人などいない。誰もがテロリストだ」と述べたという。

また、師団長らは「権限を拡大」され、これまでは軍幹部の承認が必要だった建物の爆破や空爆を実施できるようになったとも兵士らは証言している。

AFPは、ハーレツの報道内容を独自に検証できていない。

イスラエル軍はAFPの取材に書面で回答し、報道内容を否定。

「ネツァリム回廊を含むガザ地区でのイスラエル軍によるあらゆる活動・作戦は、組織化された戦闘手順、計画、作戦命令に従って実施されており、いずれも軍の最高幹部の承認を受けている」と主張した。

ハーレツの取材に応じた兵士の多くは、ネツァリム回廊を担当する第252師団の長に今夏就任したイェファダ・バッハ准将の名前を挙げている。バッハ准将は、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地キリヤットアルバ生まれ。

兵士の一人は、バッハ准将の「世界観と政治的立場が、作戦上の決定を左右していたのは明らかだ」と指摘。

別の兵士は、バッハ准将が「ガザに罪なき市民はいない」と断言したと語っている。

イスラエル軍はAFPに対し、「バッハ准将によるものとされる発言は、実際に彼がしたものではない」「全くの事実無根だ」として、バッハ准将を擁護した。

ハーレツによれば、イスラエル兵らは同紙に対し、「この戦争の実態がどのようなものか、ガザでの一部の将兵による重大な行為について、イスラエル国民は知る必要がある」「われわれが目撃している非人道的な光景を国民は知る必要がある」と主張しているという。(c)AFP