【12月25日 AFP】生命が存在するとは思えないほど荒涼とした風景が広がるチリのアタカマ砂漠(Atacama Desert)には独自の生態系が存在している。しかし今、世界中から集まるごみの山によって、その繊細な生態系が脅かされている。

 アタカマ砂漠の少なくとも3地域は、衣料品や靴、タイヤ、廃車の墓場と化している。砂漠の町アルトオスピシオ(Alto Hospicio)のパトリシオ・フェレイラ(Patricio Ferreira)町長はAFPの取材に対し、「もはや世界のごみ捨て場だ」と嘆く。

 環境NGO「エンデミック・ルーツ(Endemic Roots)」の代表、カルメン・セラーノ(Carmen Serrano)氏は、アタカマは「資源を搾取し、私腹を肥やす」には都合の良い「草木も生えない不毛の地」と思われていると批判する。

■世界的な意識の低さの犠牲に

 チリは以前から欧州、アジア、米国の古着や売れ残りの衣料が集まる拠点で、それらは南米各地へ転売されるか、砂漠に捨てられている。昨年は、世界中から4万6000トンを超える古着がチリ北部のイキケ(Iquique)免税区域に流れ込んだ。

 化学物質を素材とし、生分解に200年もかかるこうした衣類が土壌や大気、地下水を汚染していると環境活動家は指摘する。衣類の山に火が付き、有害物質を排出することもある。

 フェレイラ町長は、「世界的な意識の低さ、倫理的責任の欠如、環境保護への無関心」のせいだと嘆く。「私たちの土地は犠牲にされていると感じます」

■火星に近い地形

 広さ約10万平方キロのアタカマ砂漠は、800万年以上前から地球で最も乾燥した場所となっている。

 中でも最も乾燥しているのはユンガイ(Yungay)地区で、基本的に水がなく、太陽が激しく照り付け、栄養となるものもほぼない。しかし、この厳しい環境でも微生物の存在は確認されている。科学者たちは、こうした微生物に地球や他の惑星での進化や生存の秘密が隠されている可能性があると考えている。

 米航空宇宙局(NASA)はユンガイ地区を地球上で最も火星に近い地形と見なし、探査機のテストに利用している。