料理はまきで…経済危機のスリランカ
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【7月7日 AFP】かつては比較的豊かだったスリランカでは現在、医薬品やガスなどあらゆる物が不足している。そのような中、ガスではなくまきや炭での調理に戻る人が増えている。
まきや炭への移行は今年初め、全国でガス爆発事故が相次いだことがきっかけとなった。ガス会社がコスト削減でプロパンの比率を引き上げたため、圧力が危険なレベルにまで上昇し、1000件以上の爆発事故が発生。少なくとも7人が死亡、数百人が負傷した。
現在はガスの供給が滞り、ガスがあったとしても手が届かないほどの値段になっている。
政府には外貨がなく、ガソリンや軽油、灯油に加え、火力発電用の燃料も輸入できず、長時間にわたり停電を行っている。
レストランを経営するM・G・カルナワティ(M.G. Karunawathi)さん(67)も、まきを使い始めた。煙を吸ってしまうが他に選択肢はないとAFPに語った。「まきを手に入れるのも難しくなっている。価格も高騰している」
かつてスリランカの1人当たりの国内総生産(GDP)はフィリピンと同程度で、隣国インドがうらやむような生活水準を誇っていた。
だが、経済政策の失敗に加え新型コロナウイルスの流行により貴重な収入源だった観光業が大打撃を受け、輸入品の支払いに充てる外貨が底をついた。
ラニル・ウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相は先月5日、議会で「2023年も困難な状況に直面するだろう」と述べた。
インフレも深刻だ。国連(UN)は人口約2200万人の約8割が十分な食料を買うお金がなく、食事を抜かなければならない状況にあると推定している。
経済危機以前、コロンボ(Colombo)のほぼ全ての家庭がガスコンロを使っていた。
まき販売業を営むセリア・ラジャ(Selliah Raja)さん(60)の商売は、いまだかつてないほど盛況だ。
「以前はまきオーブンを使う顧客はレストラン1軒しかいなかった。今で需要が多すぎて追いつかない」とAFPに語った。
ラジャさんが木を買っている地元の業者は、需要の急増と輸送費の高騰のため、値段を倍に引き上げたという。
サムパス・トゥシャーラ(Sampath Thushara)さんは、茶葉と天然ゴムの生産が盛んな南部の村ネヒナ(Nehinna)で伐採業を営んでいる。「これまでは、生産できなくなったゴムの木を切るために、地主が私たちに金を払っていた」「今では、木を手に入れるために私たちが金を払っている」と話した。
実業家のリヤド・イスマイル(Riyad Ismail)さんは、2008年に発明したしちりんの売り上げが急増したと話す。イスマイルさんのしちりんは、ココナツ炭を使うもので、バッテリー駆動のファンで空気を送り込む。従来のしちりんに比べ煙やすすが抑えられている。
高級ラインの「イージーストーブ(Ezstove)」と一般向けの「ジャナリパ(Jana Lipa)」の販売価格はそれぞれ約50ドル(約6800円)と約20ドル(約2700円)。あまりの人気に順番待ちになっている。
今ではコピー商品も出回っていると、イスマイルさんは話した。 (c)AFP/Amal JAYASINGHE