中国版『ファイト・クラブ』、エンディング変更 当局の勝利に
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【1月25日 AFP】映画『ファイト・クラブ(Fight Club)』の中国版ルールその1、オリジナル版のエンディングに触れないこと。ルールその2、警察が勝利を収めるようエンディングを変えること。
中国は世界でも最も厳しい検閲を行っている国の一つで、外国映画の公開は毎年数作しか許可されず、大幅にカットされることもある。
今回その影響を受けたのが、エドワード・ノートン(Edward Norton)さんとブラッド・ピット(Brad Pitt)さんが出演する、デヴィッド・フィンチャー(David Fincher)監督の『ファイト・クラブ』だ。
中国の映画ファンたちは先週末、騰訊視頻(テンセントビデオ、Tencent Video)のストリーミングサービスで配信されている同作のエンディングに変更が加えられていることに気づいた。『ファイト・クラブ』を世界的に人気のカルト映画に押し上げた、無政府主義的、反資本主義的なメッセージが変えられていたのだった。
オリジナル版では、ノートンさん演じるジャックが、自身の分身であるピットさん演じるタイラー・ダーデンを消滅させ、ビルが爆破される様子を眺める場面で終わる。この場面は、ジャックが目指していた近代文明の破壊を示唆している。
中国版でもジャックはタイラーを消滅させる。だが、ビルの爆破シーンの代わりに画面が黒くなり、「警察は迅速に計画の全貌を突き止め、犯罪者全員を逮捕し、爆発を未然に防ぐことに成功した」というメッセージが流れる。続けて、ジャックの想像の産物であるはずのタイラーは治療のため「精神科病院」に入院させられ、後日退院したと説明される。
オリジナルを海賊版で見たことがある視聴者は、国家の勝利で終わる新バージョンに怒りの声を上げている。
中国版ツイッター(Twitter)微博(ウェイボー、Weibo)のあるユーザーは「シーンがカットされただけではなく、シナリオまで追加された」と投稿した。
エンディングの変更が政府の指示によるものか、制作側によるものかは現時点では分かっていない。騰訊視頻はこの件についてコメントしていない。
米ハリウッド(Hollywood)の映画制作会社は、中国で公開できるよう別バージョンを用意することも多い。
2019年に中国で公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)』では、ストーリーの要となるフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)の性的指向に関する複数のシーンがカットされた。(c)AFP/Beiyi SEOW