【8月26日 AFP】インド政府が自治権を剥奪し、治安部隊を派遣して厳戒態勢を敷く北部ジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)州で25日、デモ隊の投石によりトラックの運転手が死亡した。インドの警察当局が26日、明らかにした。

 パキスタンと領有権を争うカシミール(Kashmir)地方のインド側で、イスラム教徒が多く暮らすジャム・カシミール州では、ヒンズー至上主義を掲げるモディ政権による自治権剥奪から4週間が過ぎた。複数の情報源によれば電話やインターネットの回線が遮断され、移動も厳しく制限された状態が続き、数千人が拘束下か自宅軟禁下にあるとされる。

 警察によると、同州アナントナグ(Anantnag)市内で25日に行われた抗議デモで、参加者らが軍用物資を運んでいるとみなしたトラックに投石し、運転手(42)が頭部に石の直撃を受けて死亡した。PTI通信は、この事件に絡み警察が男2人を逮捕したと報じた。

 このニュースは、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が先進7か国(G7)首脳会議(サミット)開催中のフランスで、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領と会談する直前に報じられた。トランプ氏はこの会談で、通信の遮断を解除して「最大限の自制」を示すよう求めるとみられていた。

 一方、今月5日の自治権剥奪を非難しているインドの主要野党「国民会議派(Congress)」は、同党の元総裁で名門「ネール・ガンジー(Nehru-Gandhi)家」の御曹司としてインド政界に今も大きな影響力を持つラフル・ガンジー(Rahul Gandhi)氏が24日、ジャム・カシミール州のサティヤ・パル・マリク(Satya Pal Malik)知事の招待を受けて同州入りしようとしたが、インド警察に阻止されたと発表した。

 国民会議派が公開した動画には、ガンジー氏がジャム・カシミール州の中心都市スリナガル(Srinagar)の空港で行く手を阻まれ、当局者を問い詰めている様子が映っている。ガンジー氏は、「政府が何も問題はないと言っているのだから、何もかも平常なはずだ。ならば、なぜ私は(空港の)外へ出ることを許されないのか? 驚きだ」と動画の中で述べている。

 インド当局は25日、ガンジー氏のジャム・カシミール州入りを阻止したのは「騒動を避けるため」だとして、この判断を擁護した。(c)AFP