「言語の起源」解明の手掛かり、オナガザルの実験で明らかに
このニュースをシェア
【5月28日 AFP】アフリカの西部と東部にそれぞれ生息するオナガザル科のグリーンモンキーとベルベットモンキーは350万年前に進化経路が分岐したが、危険に直面した際に発する生得的鳴き声が共通していることが明らかになった。
英科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology & Evolution)」に27日掲載されたこの最新の研究結果は、人間を含む霊長類が脅威に対してどのように反応するかを明らかにしただけでなく、言語の構成要素自体の解明のヒントも示している。
東アフリカのサバンナに生息するベルベットモンキーは、ヒョウ、ヘビ、ワシという3種類の主な天敵を発見すると、天敵に応じて3種類の鳴き声を使い分ける。
仲間の鳴き声を聞いたサルは脅威の存在が見えなくても、ヒョウを知らせる鳴き声が聞こえたら急いで木に登る、ヘビの場合は身動きせずに2本足で立つ、ワシの場合は空を見渡すと同時に避難場所を探すというように、鳴き声の種類に応じた行動を取る。その様子はまるで見張り役が「動くな、ヘビだ!」や「地面から離れろ、ヒョウだ」と叫んでいるかのようにもみえる。
この独特の鳴き声が今から30年前に発見されると、原始的な言語と同等かどうかという議論が起こったと、今回の論文の主執筆者でドイツ・ゲッティンゲン(Gottingen)にあるドイツ霊長類センター(German Primate Center)認知行動学研究所の所長を務めるユリア・フィッシャー(Julia Fischer)氏は述べた。
さらに、鳴き声をどのように習得したのかという問題も提起された。若いベルベットモンキーは模倣を通じて鳴き声を学習するのか、それとも鳴き声は遺伝子に刷り込まれているのだろうか。
フィッシャー氏と研究チームは解明を進めるため、西アフリカのセネガルに生息するグリーンモンキーの群れを10年以上にわたり観察した。
東アフリカに生息する近縁種のベルベットモンキーと同様に、グリーンモンキーも大型猫科動物とヘビの危険を知らせる独特の鳴き声があり、それに応じた行動を取る。だが、近辺に生息する猛禽類は脅威ではないため、ベルベットモンキーの「ワシ警報」のような鳴き声をグリーンモンキーは持っていない。
研究チームは模型の鳥を使ってグリーンモンキーを怖がらせようとしたが、うまくいかなかった。「模型のワシに対して鳴き声を上げさせる試みはすべて完全に失敗に終わった」とフィッシャー氏は話す。