【12月25日 AFP】エジプト内務省は24日、ヒシャム・カンディール(Hisham Qandil)前首相を首都カイロ(Cairo)郊外の砂漠地帯で警察が拘束したと発表した。隣国スーダンに「逃亡しようとしていた」ところを拘束したという。

 イスラム組織「ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)」出身のムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領が7月に軍事クーデターで追放されるまで、モルシ政権下で首相を務めたカンディール氏は、96年に民営化された企業の再国営化を命じた裁判所判決に従わなかったとして、在任中だった今年4月に禁錮1年の判決を受けていた。控訴審も9月、一審判決を支持している。

 経済の立て直しを図ろうと苦心したものの不人気だったカンディール前首相は、7月にモルシ政権が打倒されて以降、比較的控えめな態度を保ってきた。欧州連合(EU)を仲介役とし、軍主導の暫定政権との緊張緩和を図ろうとした協議でカンディール前首相は、親モルシ派イスラム勢力の連合体を代表したが、8月にエジプトの治安当局がモルシ支持派の徹底弾圧に乗り出し、警官隊との衝突などで1000人以上が死亡する事態に発展したことで、協議は挫折した。

 カンディール前首相拘束と同日の早朝には、ナイルデルタ(Nile Delta)の街マンスーラ(Mansoura)の警察本部前で自動車爆弾が爆発し、警官12人を含む少なくとも15人が死亡する事件があったばかりで、エジプト国内の緊張はいっそう高まっている。

 暫定政権はこの爆発事件をムスリム同胞団によるものだと示唆しているが、同胞団側は事件を非難する声明を発表している。またアナリストらの間では、ムスリム同胞団よりも過激なイスラム勢力による犯行だとの見方もある。モハメド・イブラヒム(Mohammed Ibrahim)内相は爆発事件について、モルシ前大統領失脚後、民主的な政権移行の第1歩として来月行われる憲法改正案の是非を問う国民投票を前に、人々を恐怖に陥れることが狙いだとの見解を示した。(c)AFP