【11月10日 AFP】インド洋の島国モルディブの最高裁は、10日に予定されていた大統領選の決選投票の延期を命じた。2012年2月のクーデターで辞任に追い込まれたモハメド・ナシード(Mohamed Nasheed)前大統領(46)は、政権復帰の機会を否定されたかたちになった。

 9日の投票でナシード氏は、得票率46.93%で首位だったものの、当選に必要な50%には届かなかったため、翌10日に決選投票が行われる予定だった。マウムーン・アブドル・ガユーム(Maumoon Abdul Gayoom)元大統領の異母弟であるアブドラ・ヤミーン(Abdulla Yameen)氏が得票率29.73%で2位、実業家のガシム・イブラヒム(Qasim Ibrahim)氏が得票率23.34%で最下位だった。

 モルディブのFuwad Thowfeek選挙管理委員長は、第1回投票の前に候補者全員が同意した投票日程を順守する方針を表明していたが、最高裁は10日未明、投票開始予定時間の数時間前という土壇場で決選投票の延期を決め、政府の全関係部門に通知した。

 決選投票でナシード氏とヤミーン氏のどちらに投票するべきか、自らの支援者に指示する時間が欲しいと最高裁に申し入れたイブラヒム氏は、ナシード氏の政権復帰を阻止するためヤミーン氏を支持すると表明した。

■行き詰まるモルディブの政局

 新大統領を選出できないモルディブ情勢に国際社会の懸念が高まる中、当局の介入で投票が中止されたのはここ2か月で3度目となり、同国の政局は行き詰まりを見せている。

 ナシード氏は9月7日の最初の投票でも首位だったが、最高裁が選挙結果を無効とした。

 さらに10月19日に予定されていたやり直しの投票は、手続きが守られていなかったと判断した最高裁の新たな命令を踏まえ、警察に阻止され、モルディブ当局はナシード氏の再選を是が非でも阻止するつもりなのではないかという各国政府の疑念は強まった。

 米国と英連邦(Commonwealth)はいずれも10日に予定されていた決選投票の延期に批判的な姿勢を示した。米国務省のジェン・サキ(Jen Psaki)報道官は、「選管の方針に従って2回目の投票(決選投票)を直ちに実施し、モルディブ国民が自ら選んだ大統領に導かれるかたちにするのが必要だ」と強調した。

 ナシード氏のモルディブ人民主党(Maldivian Democratic Party)は、大統領不在になれば憲政の危機になりかねないと警告していたが、最高裁は9日、退任するモハメド・ワヒード・ハッサン(Mohamed Waheed Hassan)大統領が、暫定大統領として権限を維持することを認めた。

 ナシード氏は2008年、複数政党制を認めた新憲法下で初の大統領選に勝利し、30年続いたガユーム氏の強権体制に終止符を打ったが、司法当局や治安部隊などの主要機関と対立し、昨年2月に辞任に追い込まれていた。(c)AFP/Ishara KODIKARA