【8月13日 AFP】米国で満員の刑務所と貧困生活の間を行き来する悪循環をなくす取り組みの一環として、米司法当局が一部の麻薬犯罪について、法定最低刑期の短縮化を計画していることが12日、明らかになった。

 エリック・ホルダー(Eric Holder)司法長官が米国法曹協会(American Bar AssociationABA)で行った演説の草稿によると、1986年と88年に米国刑法に導入された「法定最低刑期」について同長官は「非生産的」だと述べ、議会での法改定が望ましいとした。また当面の措置として司法省の科刑方針に変更を命ずると述べている。

 この中でホルダー長官は、麻薬絡みの犯罪者のうち凶悪度が低く暴力行為を起こしておらず、また大規模な組織や暴力団、麻薬カルテルとの関係がない者については、厳格な最低刑期の適用を撤廃するとしており、「今後、そうした犯罪者については、暴力犯罪や麻薬密売人の大物などに科されるべき過度な刑罰ではなく、個々の犯罪行為を考慮し相当する刑を科す」と述べている。

 ホルダー長官によれば1980年以来、米人口の増加率は約30%であるのに対し、刑務所に収監されている受刑者の数は約8倍に増えている。また連邦刑務所の受刑者21万9000万人の半数近くは、麻薬絡みの犯罪者だという。連邦刑務所と州立刑務所に郡などの地方刑務所を合わせた運営費は、2010年だけで800億ドル(約7兆8000億円)にも上っていることから、同長官は改革が必要だと強調した。

 ホルダー長官は「麻薬関連犯罪における法定最低刑期という概念について、根本から考え直すことから始めるべきだ。ある犯罪において問題となっている個別の事実や行為に関係なく、一律に最低刑期を科す法律は、検察官、判事、陪審員らが持てる裁量を制限するものであり、司法制度に対する軽視を生む。無差別に適用されれば、それは公共の安全に寄与するどころか、地域社会を機能不全にさせる。つまりは非生産的だ」と指摘した。(c)AFP