【6月20日 AFP】店の外に最初の客が並び始めるのは午前3時半。6時ごろには、さらに列が伸びる。

 列を作っている全ての人は、約1か月前に登場して以来、ニューヨーカーの心をつかんでいる流行を味わいたいという願いで一致している。半分はドーナツで、半分はクロワッサン。ニューヨーク・グルメの新しい流行「クロナッツ」だ。

 ソーホー(Soho)地区の中心にある「ドミニク・アンセル・ベーカーリー(Dominique Ansel Bakery)」が開店する8時には、待ちに待った客たちは爆発寸前。1時間以内にクロナッツはひとつ残らず売り切れる。

 ニューヨークで指折りのフランス人パティシエ(菓子職人)でオーナーのドミニク・アンセル(Dominique Ansel)氏いわく、5月18日の発売開始以来、クロナッツを求める客足はソーシャルメディアで巻き起こる食の流行に典型的なパターンを示し、初日に売れたのは50個だったが、翌日には棚にあった100個が15~20分足らずで消えた。以来、開店前には毎日150~200人が列を成す。

「クロナッツ」のレシピ完成には2か月かかった。米国とフランスと食文化の融合だと一目で分かる「ハイブリッド・ペストリー」が作りたかったという。革新的な「クロナッツ」は、伝統的なクロワッサンのパイ生地を丸くドーナツ状にし、それをたっぷりの油で揚げて、クリームを詰め、メープルシロップに転がした上で軽くグレーズコーティング。柔らかいけれどサクサクしていて、軽くて美味とファンは賛美する。

 ジェシカ・アマラルさん(30)は午前3時に家を飛び出したという。「自分はばかだと思うけど、みんな3時には並んでるってネットで読んで。結婚8周年の記念に、夫と食べたらいいと思ったの」。その後ろに並ぶスティーブン・ゴーさんは妻に頼まれ、スタテンアイランド(Staten Island)の家から朝5時に着いた。営業マンのジャスティン・ゴーダーさん(30)はニュージャージー(New Jersey)州から1時間かけて到着。トレーダーのアービンさんは、本当はもう働いている時間だと打ち明けた。生まれて4か月の赤ちゃんを抱えたジーナさんは、6時半にタクシーで到着。

 販売を開始した当初は、1人6個まで買うことができた。しかしオーナーのアンセル氏は、1個5ドル(約500円)のクロナッツが、ネット上で1個50ドル(約4700円)で「転売」されているのを発見し、1人2個に限定することにした。

 8時にアンセル氏が店の扉を開け、8時56分には250~300個あったクロナッツはほぼ完売した。9時5分、まだ店の外にいた人たちに、今日のクロナッツは全て売り切れたことを告げると、かろうじて店内に入っていた20人ほどが最後のクロナッツに飛び付いた。

 すかさず1人の客が、自分が並んでいた順番を「100ドル」(約9500円)で他の客に譲ろうとすると、友人同士の2人組が喜んで応じた。2人はそれぞれクロナッツ2個ずつを嬉しそうに手にした。(c)AFP/Brigitte Dusseau