【1月19日 AFP】カリブ海の島国ハイチで発生しているコレラの流行は、1000万人いる全国民の半数足らずが予防接種を受ければ止めることができるとする研究論文が、英科学誌ネイチャー(Nature)系列のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」で10日、発表された。同国では2010年以降、63万5000人以上がコレラ菌に感染、8000人近くが死亡している。

 米国の研究チームは数理モデルを用い、人口の46%に予防接種をすれば「感染は抑えられる」との結論を下した。論文には「コレラワクチンの使用に関しては昨今議論があるが、われわれの研究の結果は、ハイチの疾病対策において中程度の範囲を対象としたコレラワクチン接種が重要な要素であることを示唆している」と書かれている。

 論文によると、ハイチの今回の流行では昨年末までに7912人が死亡している。ハイチでは数十年間コレラの流行が起きていなかったが、ハイチ大地震後の2010年10月に再び感染が報告されるようになった。

 今回の流行は、ハイチ中部ミルバレ(Mirebalais)にある国連(UN)平和維持活動で派遣されたネパール軍兵士の宿営地周辺から発生し、震災で上下水道施設が破壊されていたことから急速に拡大したと考えられている。長年コレラとの接触がなかったため、ハイチ住民にコレラに対する自然免疫がなかったこともさらに感染拡大をあおった。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)への取材によれば、ハイチ保健省とWHO、汎米保健機構(Pan American Health OrganisationPAHO)との間では予防接種運動の立ち上げについての協議が行われているが、現時点では何の合意にも至っていない。

 論文を共同執筆した米フロリダ大学(University of Florida)の感染症専門家、Zindoga Mukandavire氏は、ハイチにはコレラ菌の長期的な温床となりかねない広大な河口地域があるため、封じ込めに失敗するとコレラが風土病として根付いてしまう可能性があると警告している。(c)AFP