【11月2日 senken h】英国レザーグッズの伝統と矜持を、頑なに守り続けるファクトリーがある。すべてのプロセスを英国の職人が手作業で作り続けるビスポーク(オーダーメード)のレザーバッグ、シンプソン(SIMPSON)だ。今年からはレディーメードの新ブランドもスタートして、歴史をモダンにアップデート。英国トレンドの今、改めて見つめたい老舗の温故知新がここにある。

 元々、シンプソンを立ち上げた職人はすべて英国最高級のレザーファクトリー、タナークロール(Tanner Krolle)社にいた。英国王室御用達だったタナークロールは、「ロールスロイス」と同じように、ハンドメードで作るレザーグッズ作りで英国を象徴する存在だった。

 しかし多くの老舗がそうであるように、タナークロールもまた廉価なレザー製品が広がる90年代、順風満帆ではなくなる。当時、経営が行き詰まったタナークロール社に、その伝統と高い技術へ敬意を示したシャネルが、ファクトリーを支援してグループ化した。

 その時、タナークロールのレザー作りの原点とも言えるビスポーク(オーダーメード)製造の灯を繋ぐと奮い立ったのがシンプソンの創業メンバーたち。タナークロールのうちのビスポーク部門は職人たちがシンプソンとして独立して英国に残すことを選択。かくして、タナークロールの神髄が現代に受け継がれている。

 シンプソンが今も作るのは英国を代表する革素材ブライドルレザーを、ハンドメードで仕上げる紳士かばん。ロウをじっくり浸透させた牛革・ブライドルレザーを手仕事で裁断、縫製したかばんは、心地良いほどに頑固な堅ろうさを持つ。親から子へと受け継がれ、ファミリーになじんでいくような重厚さだ。

 そんなシンプソンもタナークロール時代とは変化し、伝統を柔軟に刷新しているのも今の特徴だ。今年からは、日本のショップへの別注企画もスタート。日本での販売元・グローバル ブリッジ トレーディングを通じて、カーボンプリントのドキュメントケースや革小物など、スマートなコレクションを見せている。

消失していたかもしれないハンドメードの英国バッグは、もしかすると、今の時代にはちょっとオーバースペックかもしれない最高級品。でもそのこだわりを頑なに守り続ける職人気質は、本物が求められる今、美しく見える。(c)senken h

【関連情報】
<シンプソン 公式サイト<外部サイト>
<グローバル ブリッジ トレーディング 公式サイト<外部サイト>