プロのデザイナーになるだけなら、デザインセンスはゼロで良い。
という釣りタイトルの新年初エントリーですが皆様如何お過ごしでしょうか。
タイトルは釣りですが、結構本音だったりします。
結論から言えば、デザインは努力のあとが見えやすいジャンルであるから、センスなんかなくたって、ポイントを押さえて努力すれば誰だってプロになれる。
別に国家資格が必要なわけでもないし、名乗った瞬間からプロなので、最低限の努力をすればとりあえず食えるでしょ。という話。
ただ、大前提として、ここでの「プロ」の定義は「お金をもらってデザインの成果物を納品し、それでとりあえずごはんが食べられる人」ということにしておきます。
ひな壇芸人とデザイナーは本質的に同じ気がする
バラエティー番組などで、ひな壇の芸人さんと司会者が言葉のキャッチボールをする姿は良く見るかと思います。
ひな壇側のパターンは以下の通り
- 振られた話題を普通に返す
- 前の人のボケを使って返す
- パスとして受け取り、持ちネタで返す
- 唐突なぶっこみを決める
などといったところでしょうか。
デザイナーで言えばこれらの返しは以下のようになります。
振られた話題を普通に返す
無難に行くならこうだよねという選択肢に近いのではないでしょうか。
- あまり自分を出せない、自分以外のアカウント(や代理店)のクライアントに対する提案
- 明確な意思を持って発注してくるがゆえに、オペレーター的にやらざるを得ない案件
- 初めてのクライアントで、攻めたもの、自分らしいものと一緒に出す無難な案
といったように、攻め手が難しい時や、あまり荒ぶるわけにもいかない場合の一手になるような気がします。
前の人のボケを使って返す/持ちネタで返す
これって多分お約束とかお作法なんだと思います。
デザインでもお作法や持ちネタというのは当然あって、季節感であったりフォント選びであったり、細かいディティールやモチーフ選びにつながる話なんじゃないかなあと思っています。
- 2月〜4月くらいの学習塾広告における圧倒的なまでの桜モチーフ
- 流行のデザインパターンを使ったグラフィック制作
- WEBでいうところのJavaScriptなどを使った動きのあるビジュアル
などがこのあたりに含まれるのではないでしょうか。
ここは一番日々の努力がわかりやすく現れるところで、「先着◯◯名無料体験キャンペーン」ならスペシャル感のある「招待状」モチーフがいいんじゃないか、とかのとんち力も必要。
ある種の連想ゲームだったり、モチーフをデザイナー個人が努力してストックを増やしておくことで、スピードもクオリティも向上できます。
流行のデザインパターンも、いかに多くのインプットを咀嚼できているかという話であるし、動きのあるビジュアルにしても、多くのjQueryプラグインを知っていたり、スクラッチでプログラムを書けたりといった、持ちネタで勝負をする形になるので、ここも土台は努力なんですよね。
唐突なぶっこみを決める
ここは完全にファンタジスタの領域です。
- 普通に持ち出すには勇気がいるレイアウトや色彩(なのにかっこいい)
- 流行に対して逆行するレイアウトや色彩感覚(なのにかっこいい)
などといったところでしょうか。
シビレるデザインは完全にこの領域にあることが多いです。
なぜなら、狙ってハマることが非常に難しく、こここそセンスが最も必要とされる部分だからです。
本職のデザイナーさんでも、年間数回出せればいいレベルなのではないでしょうか。
本当にデザインにセンスは必要ないのか
ざっくりひな壇とデザインをマッピングさせたところで、本題へ。
デザインでご飯を食べるにあたって、デザインセンスがいらない!というメッセージですが、あえて攻撃的な釣りタイトルにしたのにはこのような理由があります。
デザインセンスによってもたらされるものとは、そもそもデザインのセンスってなんでしょう。
所詮、美的感覚だったり、感性だったり、審美眼だったりと、明確に数値化できるものではない以上、どうしたって好き嫌いが別れるのではないでしょうか。
デザインで食べていきたいなら多分3通りなんですね。
- 7割の人が良いと思うものを作る
- 少ない人数でも狂信者を抱える
- 超光速で仕事を完遂できる
このどれか。
少なくとも、フリーランスであればそのまま3つのうちのどれかかと思います。
就職してインハウスのデザイナーになるとするならば、採用基準として、採用担当が気に入るものが作れるか、量産できるか、とかだったりするので、そう変わらないと思います。
7割の人が良いと思うものを作れる人は、世の中的にセンスが良い人なのだと言えます。
ただし、お作法やセオリーと言えるものだったり、流行を把握したり、モチーフの持ち玉を増やすことによって、自然と磨かれて行くんですよね。
狂信者を持てる人は圧倒的なカリスマになれる素質を持った人。
こここそもしかしたら圧倒的なセンスなのかもしれません。
「これ、凄く面白いデザインだね」みたいな話は、かじっている人間でないと共有できない部分だったり、なぜそこが面白いのかといったことは言語化することが凄く難しい。
でも、そういったデザインができる人には、多分僕には勝てません。
というか、世の中の大多数の人は狂信者なしでご飯は食べられます。
でも、狂信者を増やしていくことは必要で、それは成果物の積み重ねだったり、打ち合わせの積み重ねだったり、いろいろな提案の仕方だったり、デザインとは別のところで生み出せるというのもまた事実なのです。
そして最後のスピード。
スピードに関しては、純粋にソフトウェアを使う速度は慣れ。
デザインって実はアイデア出しが結構時間がかかることが多いので、この短縮にはモチーフを決めるための「とんち力」だったり、そもそもうまくヒアリングをするための能力だったり、いわゆるセンスとはこれもまた別だと思うのです。
結局何が言いたかったのか
その人なりの売りがあって、セオリー通りある程度できる人。
別の得意分野を生かすなど、その人ならではの技を持っている人。
このふたつに関してはある程度の速度を出せれば三流デザイナーとして問題なく、(18万くらいの給料で)食べていけるだろうし、ある程度フリーランスでも仕事ができるでしょう。
審美眼を頑張って磨いて、アウトプットしていくジャッジを厳しくしていってください。
きっとそれが二流デザイナーへの第一歩ですし、突き詰めたり、何かをつかむことで一流になれるかもしれません。
色々と業務をこなしながら、「自社サイトのバナーを作りたい」だとか、「ちょっとしたPOPを作りたい」という人もいることでしょう。
勿論、プロに頼む必要のある内容、必要ない内容もあるわけで、ちょっとしたものならできてしまう。というレベルまではすぐ到達できるんですよ。
デザインができることは特別なことになり得るけれども、デザインができるということ自体は別に特別なことではないはず。
どう使うのか、どんなデザインができるのか、といったところに特別なものが潜んでいるのではないでしょうか。
そうなると、底辺プロであったり、ちょっとしたものの発注に頼るような生き方では今後厳しいよね。というように考えています。
ましてや、今時エンジニアさんだって多少のデザインできなきゃダメだよねと、ちょっとしたデザインに手を出していたりします。
そんな今だからこそ、デザイナーさんには「こんなデザインが得意」だと言える何かを持ってもらいたい。
そこがデザイナーとしてのスペシャリティーになり得ると思うし、それがないと発注側も発注しにくいうえに、デザイン業界も新しいヒーローが生まれないのではないかと感じています。
そして、できることなら、兼業デザイナーがもっと増えればいいと思っています。
すべてのバナーに専業デザイナーが必要かといえば、必ずしもそうではないと思うし、それによって発注、戻し、修正などのあらゆるコストが発生します。
スピードが早く、やりとりに慣れたデザイナーであれば問題にならないかと思いますが、よくいう「ちゃちゃっと作ってよ」を担当者ができるようになればいい。
発注側も効率的な発注ができるようになり、ビジネスの加速を助ける武器が増える。
そんな未来を作れればいいなと考えています。
今年はそれを実現させるための年にしようかと思っています。
と、いうわけで、本年も宜しくお願いします!